「リア充ざまぁ(笑)」な爽快ホラーかと思いきや……『マウント・ナビ』
↑これは映画のシーンではなく、ゾンビアイドル小明です
(撮影=尾藤能暢)
自主製作のホラー映画を撮影すべく、日本の中部地方にある“なび山”を訪れた男女8人は、地元の人からの「ここへは入るな」という親切な注意も聞かず(なんてキレイなフラグでしょう!)、はしゃいだり空気を悪くしたりしながら撮影にいそしむが、山頂付近に未確認飛行物体を発見。撮影メンバーは大興奮で「すげぇぞ!」「やっぱ幽霊よりUFOだろ!」「オレもいっぱつ当てないとメジャーな作品は撮れないよな!」と、企画をホラーフェイクドキュメンタリーからUFOを追うドキュメンタリーに変更。そして8人はついに禁断の地に足を踏み入れ、未曾有の恐怖に襲われることになる……。
最初はホラー映画の序盤によくある、若者が電波の通じない山奥で「ヒャッハー!」と好き放題やって、姿の見えない恐ろしい何かに、イケメンやビッチがひとりずつやられ、最終的にグループ最弱のギークか処女が生き残る爽快なホラーかな~、と思ってたんですが、そんな薄っぺらい予想は開始2秒で裏切られました。
「あ、これ生き残れないやつだ」と、なんなら映像前に流れる最初のテロップでわかります。よって、その後は「この人たちみんな死ぬんだ……」と思いながら観るしかないので、無名のくせにこだわりが強く、辛い撮影を何度もやり直させる高圧的な監督も、「こういうのをみんな待ってるんだよぉ~」とゲッスい笑いを浮かべながら出演女性の野ションを盗撮しようとするカメラマンも、こころなしか優しい気持ちで見守ることができますね。
また、撮影内容をホラーからUFO追跡に変更したにもかかわらず、“若い男女8人グループ”“地元住人の忠告を無視”“携帯の電波もない山の中”“自らどんどん引き返せないレベルの場所まで進む”と、ホラー映画のお約束を辿っていくので、無意識に自分たちが主役のホラードキュメンタリーを撮ってしまっているのもおもしろいです。
(c)2014「マウント・ナビ」製作委員会
そして、山場はやっぱり殺戮シーンですよね! ここでも私は「鬱蒼とした山の中でひとりひとり消えていく仲間、誰がリーダーシップをとるのか揉めてバラバラになっていく生存者たち……」みたいな、ベタな、暗い展開を予想していたんですが、それも見事に裏切られます。森、意外と見渡し良い! 生存者、ケンカしながらも仲良い! ひとりひとりじわじわと……じゃなく、テンポ良くポンポンポーンとすごい死体が転がってきたり降ってきたり! 何? コレ新しい!! だいたい最後の方まで生き残りがちなヒロインですら最初の方で犠牲になるので、「これは後半の尺は足りるのかしら……?」なんて不安になってくるんですが、そこはハリウッドリメイクも決まった『AVN/エイリアンVSニンジャ』の千葉誠治監督、しっかり前半のUFOの伏線を回収し、物語は第2、第3の修羅場へと続いていくのです……!
映像は終始ファウンド・フットテージ(『パラノーマル・アクティビティ』とか『食人族』みたいなアレです)で臨場感も半端ないですし、登場人物のキャラクターも、スクールカーストでいうと下にいたような、言うなれば仲間っぽい人たちが多いので、観ていても「リア充ざまぁ(笑)」という爽快感が皆無で、ひたすら嫌がらせのように恐ろしく、私はゾンビですが、こういう仕事がきたら断ろうと思いました!
(文=小明)
●『マウント・ナビ』
http://kingmovies.jp/library/kixf-219
10/8(水)Blu-ray&DVD発売
発売・販売元:キングレコード
Blu-ray:¥4,800+税/DVD:¥3,800+税
●小明(あかり)
1985年、栃木県生まれ、千葉県育ち。02年、ホットドッグプレスドリームガールズ準グランプリを受賞し、デビュー。写真集『エプロン宣言』を発表するなど、グラビアアイドルとして活動していたが、06年に所属事務所を退社。以降、フリーのアイドル兼コラムニストとして活動しつつ、ゾンビアイドルとしてテレビ・映画に出演中。著書に『アイドル墜落日記』(洋泉社)、キングオブコメディ・高橋健一との共著に『卑屈の国の格言録』(サイゾー)。ネットテレビ『小明の副作用』(サイゾーテレビ)出演中。