年末企画:松崎健夫の「2015年 年間ベスト映画TOP10」
【リアルサウンドより】
1. はじまりのうた
2. ストレイト・アウタ・コンプトン
3. ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール
4. 私たちのハァハァ
5. セッション
6. ラブ&マーシー 終わらないメロディー
7. Dearダニー 君へのうた
8. エール!
9. 劇場版 BiSキャノンボール 2014
10. 悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46
次点. EDEN/エデン
2015年を振り返ったとき、「音楽映画が豊作だった」というのが僕の印象のひとつ。そこで、リアルサウンド映画部さんでは、<音楽>を題材にした作品に特化したベスト10を並べてみた。その中でも<アイドル映画>は、“ドキュメンタリー的”というキーワードで紐付け可能な作品に秀作が多いのも特徴だった。それはAKB48やSKE48作品のような、単なるアイドルグループ・ドキュメンタリーだけでなく、例えば、ももいろクローバーZが主演した『幕が上がる』のように、フィクションであるけれど“順撮り”によって彼女たち自身の成長記録にもなっているような作品があった。
もともと歌謡映画の文脈から発生した<アイドル映画>は1970年代に生まれ、80年代前半に隆盛を誇った。その背景のひとつには、映画界と芸能事務所が結びつき「新曲のプロモーション」の場として利用されたという一面もあったが、今はSNS時代におけるアイドルのあり方を総合的・多角的視点で語れるという要素を持っている。あるジャンルを構成する映画群が同時多発的に生まれる背景には、その時代の社会事情などが密接に関係しているもの。その時はその理由が判らなくとも、後の人たちが事象を照らし合わせることにより、発祥理由はいずれ導かれるものなのである。
そういった中で、2015年に同時多発的に公開されたのが『進撃の巨人』の前・後篇や『グリーン・インフェルノ』などを筆頭とする「人が食われる映画」だった。<食人>という描写は『野火』や『フリーキッチン』にもあったが、実はこれらの描写が2016年公開作品にも散見出来るのである。我々の未だ見ぬ時代や社会の流れをこれまでも予見してきた<映画>。少なくとも言葉を生業にする者として、僕はこの一年で随分と“言いたいことが言い難い”息苦しい世の中になったと感じている。これらのことを照らし合わせ、後の評者たちは「人が食われる」映画をどう分析するのであろうか。
■松崎健夫
映画評論家。東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻修了。テレビ・映画の撮影現場を経て、映画専門の執筆業に転向。『WOWOWぷらすと』(WOWOW)、『ZIP!』(日本テレビ)、『キキマス!』(ニッポン放送)などに出演中。共著『現代映画用語事典』(キネマ旬報社)ほか。Twitter
■作品情報
『はじまりのうた』
Blu-ray & DVD発売中
監督・脚本:ジョン・カーニー
出演:キーラ・ナイトレイ、マーク・ラファロ、ヘイリー・スタインフェルド、アダム・レヴィーン、ジェームズ・コーデン、ヤシーン・ベイ、シーロー・グリーン、キャサリン・キーなー
価格:Blu-ray…4700円(税抜)、DVD…3800円(税抜)
発売・販売元:ポニーキャニオン
(c)2013 KILLIFISH PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED.