緊迫の中国軍用機8機侵入! 日韓から30機緊急発進の異例事態も“本丸”は北朝鮮ICBMか
Photo By Kevin McGill from Wikipedia.1月9日に中国の軍用機8機が東シナ海から対馬海峡を通過し、日本海へと向かうルートを往復、日本と韓国の防衛識別圏に侵入したことで、両国の戦闘機がそれぞれスクランブルをかけ警告したことが伝えられた。各メディアは日中の緊迫した距離感を伝えたが、実のところ、その内幕は日中の衝突ではなく、互いに対北朝鮮を見据えた動きであった可能性が出てきた。
ある消息筋によると、「中国機が対馬海峡を通過したことよりも、その前日に北朝鮮がICBMミサイルをいつでも発射可能と表明したことの方が問題視されている」という。
実際、中国機の動きについては、防衛省の特別機関、統合幕僚監部が「戦闘機等を緊急発進させ、対応した」と極めて簡素なプレス発表を行っただけだった。これを米・ニューズウィーク誌が「日韓は戦闘機30機を緊急発進」と伝えた。戦闘機のスクランブル発進は通常2機1組で、4基地から出動したとして8機。それが日韓で30機にも及ぶというなら、それこそ日本だけでも第2陣が出たことになる計算だ。しかし、気になるのはその陣容で、浜松の早期警戒指揮機E-767までもが発進していたことだった。
同様に今回、沖縄からは米軍の偵察機RC135、通称コブラボールが飛び立ったとの情報もある。同機は北朝鮮が弾道ミサイルを開発したため沖縄に配備されたものであり、いわばミサイル追尾専用機。浜松から飛んだE-767も、高いレーダー追尾能力を持つもので、これらはかつて北朝鮮がミサイル発射を行ったときとほぼ同じ対応なのである。日韓中の衝突に見えて、実はその視点は北朝鮮にあったという見方ができるわけだ。
見過ごせないのは中国機も同様の陣営だったことだ。中国軍機8機は前代未聞の数であり、編隊の大半は確かに戦略爆撃機H6であったが、ほかは北朝鮮の情報収集に使われていることが多い早期警戒機Y8と、情報収集機Y9だったのだ。これは日韓を刺激するために出動したのではない可能性があるわけだ。
そのことは、統合幕僚監部発表による中国機の飛行ルートを見てもわかる。中国大陸を離陸していったん、韓国の防空識別圏を抜け、公海上空を飛行したのち、次に韓国の識別圏を避けるようにして対馬海峡を通過して北朝鮮沖合に達している。中国は日本か韓国かの近傍を通過しなければ北朝鮮東岸を監視できないため、目的地は日韓ではなく北朝鮮だった根拠になりうる。
翌10日、統合幕僚監部は、中国海軍の艦艇三隻が対馬海峡を南西進したとも公表した。これまたなんらかの任務を終えて日本海から中国領海に抜けたと見ることはできる。これらの材料から、中国機の侵入が単にいつもの日本への挑発行為であるという安易な判断は禁物だ。その先に別の目的がある場合も想定するならば、いよいよ北朝鮮のミサイル準備が緊迫した局面を迎えているという可能性も十分ある。
逆に「北のミサイルなどハッタリに違いない」とする論調や、「いつもの中国の軍事的挑発だ」とする識者もいるだろうが、念を入れてあらゆる事態を想定しておく方が得策のはずだ。いずれにせよ、この極東で厄介ごとが増えつつあるのは間違いないのだから。
(文=青山智樹/NEWSIDER Tokyo)