【怒濤の名古屋3連珍】その1 パンの耳か割り箸か!? どんぶり一面に浮かぶ『謎の物体』
パッと見た目は、完全にパンの耳に見えてしまった。隣で大盛りを注文した女性の丼は、ほぼ表面張力の状態だった。
ん!? ナニこれ? 割り箸にしちゃ短いけど……。あそっか、パンの耳!? でもなんでパンの耳がラーメン丼に?
さて、今回から名古屋の珍級グルメを3連発で特集するが、今回はその1発目。ハテナだらけの謎の丼があるのは、名古屋市営地下鉄桜山駅から徒歩10分ほどのところにあるラーメン屋「好陽軒」だ。和モダンでシンプルな構えの店に入ると、
「いらっ~さいまぁ~せぇ~」
と、歌うように迎えてくれた。
一面をメンマで覆われた丼に箸をいれ、天地返しすると底から中太の麺があらわれた。
その歌声の主は厨房で忙しそうに腕前を振るうご主人なのだが、きちっと七三に分けたヘアースタイルと、そのダンディーな顔つきは、最近流行のコワモテのラーメン屋の大将とはほど遠い、公務員か銀行マン、もしくは腹話術の人形みたい(失礼)に端正な顔つきだ。もっとラーメン屋っぽい言い方をすれば、“ラーメンの鬼”故・佐野実に、たっぷりの愛嬌をトッピングした柔和な大将なのだ。
で、肝心の謎の丼だが、もちろんパンの耳でも短い割り箸でもなく、その丼を埋め尽くしていたものは、支那チク=メンマだった!
実は以前、都内で有名な細切りメンマラーメンを食べたことがあるのだが、その際、メンマのコリコリした食感が、食後もずっとアゴに残り、それ以来、メンマが若干、トラウマになりつつあった。しかし、好陽軒のメンマは柔らかく煮込まれているにもかかわらず、適度な歯ごたえがある。口に放り込むとコリコリ、シャグシャグと心地いい音色が店中に響いているように聞こえてくるのだ。
醤油味の澄んだスープの底には、叉焼も発見した。
さらに、メンマを楽しませてくれるのが、スッキリとした醤油スープと中太の麺、そして、
「ありがとーございましたー、またどーぞー」
と、帰る客も歌うように送り出す店主と店員さんのハーモニーだった。ひょっとしてこの店のウリは、メンマラーメンよりも店主のこの歌声のような挨拶なのかもしれない。
たいへん、うもうございました。
桜山好陽軒メンマラーメン「竹」1100円
インパクト ☆☆
味 ☆☆☆
店 ☆☆☆
メンマラーメンもうまいが、ニコやかな店主と店員の笑顔が何よりのトッピングだった。
(写真・文=よしよし)