さほどイケメンでもない! 演技も微妙! なのに映画主演級が続くナゼ――【山﨑賢人】“王子バブル”終了!? ゴリ押し後に問われるその真価
――原作付き実写映画ばかりが量産される邦画業界で、“王子”の名をほしいままにしている山崎賢人。数多くの恋愛マンガ原作映画にヒロインの”相手役”として抜擢されてきたが、なぜそこまで人気なのか? むしろ本当に人気があるのか? 事務所のゴリ押しを疑うような山崎賢人の、映画主演の背後にある業界の事情とは。
数冊発行されている山崎賢人の写真集。映画やテレビではなかなか見られない、文字通り赤裸々な姿にお目にかかれる。ファンでなくとも好きになる!?
今シネコンに行けば、必ず山﨑賢人の主演映画が上映されている――これは決して大袈裟な表現ではない。この1年で見ても『ヒロイン失格』(2015年9月)、『orange―オレンジ―』(15年12月)、『オオカミ少女と黒王子』(16年5月)、『四月は君の嘘』(16年9月)と、4本もの映画で立て続けに主演に抜擢されている。さらにその間、テレビドラマでも、連続テレビ小説『まれ』(NHK/15年3月~)、『デスノート』(日本テレビ/15年7月~)、『好きな人がいること』(フジテレビ/16年7月~)と、連続して主役クラスで出演。そして17年には映画『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(夏公開予定)、『一週間フレンズ。』(17年2月)、『斉木楠雄のΨ難』(公開日程未発表)など原作モノの実写化作品に主演する予定。これは不自然なほどの超ハイペースだ。
しかも山﨑が一躍有名になったのは、ほんの2年ほど前、14年に公開した映画『L♡DK』からだ。剛力彩芽と共に高校生の恋愛を演じ、「壁ドン」ブームの火付け役にもなったが、だからと言ってほかにも人気の若手俳優は多くいるため、これほどまでに主演に引っ張りだこになるような器なのか、と聞かれれば疑問が湧いてくる。もちろん『L♡DK』以来、“王子”と評され、女子高生を中心とした若い世代に人気があるのは確かだ。しかし世間のイメージは「最近出てきたばかりの若手俳優のひとり」というのが大半であり、主演クラスの俳優というイメージはないだろう。この山﨑賢人連続主演現象の裏側には、単に“売れっ子”という言葉だけでは片付けられない何かがあるのでは――そう考えずにはいられないような状況となっている。
大手芸能事務所の“売れっ子誕生”方程式
こうした現象を見て、事務所がむやみやたらと山﨑を押している、いわゆる“事務所のゴリ押し俳優”だと思う向きも多いことだろう。山﨑が所属するのは北川景子や山田孝之など今をときめく俳優が肩を並べる超大手芸能事務所スターダストプロモーション。「もちろん事務所の力は大きいと思います」そう語るのは、映画製作関係者のA氏だ。
「特にスターダストのように、芸能事務所が映画の製作委員会に出資している場合は、売り出しやすい。うまく自社の俳優が主演で映画の企画が通ったら、その脇役だけでなく相手役(ヒロイン)にまでも同じ事務所の新人俳優をねじ込んできたり、さらには他作品への出演を交渉してきたりもする。製作側は主演ありきで企画を提案するので、数字を持っている俳優の所属事務所の意向は無視できないことも多い。ジャニーズなどは、相手役の選出にまで口を出してきますよ。山﨑賢人だけでなく、山田孝之、岡田将生、小松菜奈などスターダスト所属の俳優が並ぶ『ジョジョ~』は、さすがに、やりすぎだと思いましたけど(笑)」
こうした政治力を使えるのは、やはり一部の大手事務所に限られる。
「大手のプロダクションでは、期待の新人を売り出すために自社からも多く出資して映画の製作委員会に入るわけです。やはり名もなき若手俳優は、とにかくできるだけ早く主演になることが大事。一度主役を演じれば、“主演クラス”という格がつく。そのために、出演料を大幅に下げてでも主役にねじ込んでいきます。そうすることで、次作やテレビドラマ、CMなどへも“主演クラス俳優”として売り込むことができるんです。ホリプロやジャニーズ、アミューズなどの大手から、役者中心のトライストーンなどの事務所も、映画と合わせて若手を売り出す手法でテレビ局や配給に営業をかけています」(芸能記者B氏)
実際に山﨑は、テレビドラマで俳優デビューを果たしてから、わずか1年足らずの11年に映画『管制塔』という作品で主役を演じている。そして、それから3年後に『L♡DK』でひとつ名を売ることになるが、その間にも『リアル鬼ごっこ3』(12年5月)『アナザーAnother』(12年8月)『ジンクス!!!』(13年11月)と3作品で主演もしくは主演に次ぐ役で出演を果たしているのだ。やはりこれは、事務所ゴリ押しの賜物なのか?
「山﨑賢人は、製作側にとって起用しやすいというのもある。これは製作側のダメなところなんですが、主演で演技しているのを見ると、なんとなく格があると思ってしまうんですよ。例え演技がぱっとしなくても、主演ならばカメラが向いてる時間も長くなるし、現場は主演を中心に回しますからね。上層部に企画を通すときに、過去作の視聴率や過去作の興行収入などは大前提ですが、それでも俳優として“主演クラス”という格がないと企画が通らない」(前出・A氏)
さらに晴れて一流の俳優として認められたとしても、製作側としては安心して起用できる場合ばかりではない。
「週刊誌にもしばしばとりあげられますが、関係者の間で“小栗組”と呼ばれる若手俳優の派閥があるんです。小栗旬を筆頭に、生田斗真、松本潤、藤原竜也、綾野剛、山田孝之あたりが頻繁に飲み会を開いて演技論を語っているそうです。彼らは役者として作品にかなり口出しをしてくるので、製作としては面倒くさい存在なんですよね。彼らは当然、出演作品も相当選びますし、あの監督と組みたい、なんて話を平気でする。もちろん、青春胸キュンな少女マンガ原作映画になんて、出演しませんよ」(前出・A氏)
まだ22歳、経験の浅い山﨑はその点では扱いやすいのだという。
「若ければいいってものでもないですが、ジャニーズの俳優などは、若手でも事務所からの指示や本人たちからも意見が上がってきたりして、扱いにくい。それに比べたら、スターダストは、俳優の演技などについては、ある程度は自由にさせてくれますから、山﨑賢人に需要があるのも頷けます」(同)
小栗組に属すといわれる俳優たちは概ね30歳以上。若手枠の山﨑は、今のところ、演技よりもまずは扱いやすさというところなのだろうか。
“少女マンガ原作の男”を超えられるか?
そして山﨑の主演映画連発には、もうひとつ理由があるという。それが昨今の“少女マンガ原作ブーム”だ。
「『シン・ゴジラ』や『君の名は。』がメガヒットを記録しましたけど……でも費用対効果で考えると、1億円で映画をつくって10億円入ったら大勝ちなんですよ。それで言うと、VFXもほとんどいらない胸キュンの青春映画なんて5000万円もあればつくれちゃうから、少々のヒットで十分に“勝ち映画”になるんですよね」(A氏)
さらに少女マンガ原作となれば、あらかじめファンがいるため、ある程度の動員が見込めるというわけだ。そんな映画界のローリスクを求める風潮にうまく乗れたことが、今の主演作激増につながっているのだ。実際、山﨑は『L♡DK』から来年公開予定の『一週間フレンズ。』まで6作連続ですべて少女マンガ原作の作品に主演。「王子キャラ」というイメージもついたことで、製作側がさらに使いやすくなっているようだ。また、こんな話も。
「恋愛マンガの実写作品が、なかなか映画館に来ない女子中高生を中心とした層を呼び込んで、安定したヒットを生み続けていますが、芸能事務所からすると所属女優をそのヒロインとして送り出すことは、決していい話ばかりではない。
ティーン向けの胸キュン青春作品は映画としての格が低くて海外の映画祭などには当然出せないし、これだけヒット作が連発していると、失敗すれば逆に悪目立ちしてしまいますからね。そんなときに、恋愛マンガの実写化で相手役として実績がある山﨑賢人を起用するとあれば、ある程度は安心して出演に応じることができます。実際、その手の映画にはこれまでほとんど出演してこなかった二階堂ふみが『オオカミ少女と黒王子』(16年5月公開)に主演したのも、そうした背景があったという話も聞かれました」(某配給会社社員)
そう考えると、デビューを果たしてから、俳優・山﨑賢人の本当の評価はまだ下されていないのかもしれない。真価が問われるのは来年からだろう。相変わらずマンガ原作の作品ではあるが、『斉木楠雄のΨ難』での主演は、これまでの恋愛映画とは打って変わってギャグを演じなければならず、ひとつの指標となりそうだ。当然本人としても、俳優としての幅を見せたいところだろう。
ゴリ押しを履き違えた先に待つ芸能人の地獄
もちろん、悪い結果が続けば、製作側もさすがに使いづらくなる。超人気マンガ原作の実写映画化『ジョジョ~』でも主演を張ることが決定しているが、コアなファンが多い作品だけに、ヘタな演技を見せれば大きな期待が倍となって返ってくるだろう。
一方で、業界関係者中には、事務所のマネジメントに対して懸念する向きもある。
「正直、スターダストは、若手のマネジメントがそんなにうまくないですからね。芸能マネージャーは、タレントのアピール方法や、現場での立ち振る舞いなど、その売り出し方を総合的に考えて指示するのも仕事のひとつですが、スターダストのマネージャーは、タレントをうまくコントロールできていないと思う。
仕事を与えるだけ与えて、あとは本人に任せて自由にさせるというのが、スタイルなんですかね。裏では、『彼らは、スケジュールの管理くらいしかしない』なんて、陰口を叩かれていますよ。だから山﨑賢人も、今は自分の力で結果を残し続けるしかないでしょうね」(A氏)
こうした声は、少なくない様子。
「ある清純派のイメージがある若手俳優が、飲食店で喫煙しているところに出くわしたことがあります。仮にも売り出し中の若手俳優、ひと目がつくところならば、マネージャーは、こっそり吸わせるとか注意を払ったほうがいいと思いますけどね」(B氏)
過去には当時所属だった沢尻エリカを自由にさせすぎたが故に、かの有名な“別に事件”を起こしてしまった。
「彼女は根が素直ないい子なんですよ。ただヤンキー気質なところがあって、あの発言も取材した人間なら、あれが彼女の“地”だってわかる。事務所側も人気をいいことに自由にさせていたから、取材したことのある関係者はみな、彼女はいつかやらかすんじゃないかと思っていた。可愛くて演技もうまかったから戻ってこられましたけどね。あの事件でスターダストは、芸能関係者からの評判を落としてしまったフシがある。売れっ子も多いけれど、彼ら1軍の下には、見るも無残な屍の山が重なっています」(同)
さらにもし、ゴリ押しによって有名になっても、そこには別の地獄が待っている。
「事務所からものすごく推されていたけれど、とんと見なくなった俳優もたくさんいます。最近で思い当たるところだと、大政絢とか、すっかり目立たなくなってしまった。
もちろん、自分で持ち味を出すことで世間からも認められ、有名になる俳優もいますが、一般に認知されて稼ぐようになると、ある日突然社長案件になって事務所の上層部から活動方針に対する細かいチェックが入ったり、ほかのタレントを売り出すためのかけひき道具にされたりする。
ももいろクローバーZなどはそのいい例で、事務所の底辺で沈んでいた彼女たちがアイドルブームに乗っかって売れだした途端、その持ち味が押さえられてしまった。リーダーの百田夏菜子は今、かなり苦しんでいるそうです」(芸能事務所幹部)
今のところ山﨑の悪い話は出てこないが、主演映画がこれだけ続けば、近い将来、問題を起こす可能性もあるのだろうか? 少なくとも来年の映画の結果次第では、さらに芸能メディアの標的になっていくことだろう。
山﨑本人は自分の置かれた現状をどうとらえているのか。まだ弱冠22歳、女子高生の“キャーキャー”に天狗の鼻を伸ばしているのか、それともしっかりと危機感を覚えているのか。どちらでもなく、ただ次々と舞い込む仕事にあたふたしているだけというのがリアルなところかもしれないが。
(文/黒崎さとし)