トランプを訪問した安倍首相と孫社長にうまみ? カジノ法案の急成立をつなぐアメリカのカジノ王
トランプ氏公式ツイッターより
冒頭から申し上げるが、この記事の内容は、言わば筆者の想像に近いものだ。裏付けを取ろうとしても、取れるようなものではない。しかし、事実の積み重ねによって導き出された結果の想像である。
それは、トランプ米次期大統領と安倍晋三首相、孫正義ソフトバンクグループ社長の会談と統合型リゾート(IR)整備推進法案(以下、カジノ法案)とを巡る奇妙な関連性についてである。
現地時間11月17日、安倍首相は米大統領選に勝利したばかりのトランプ氏の、ニューヨークの自宅であるトランプタワーを訪問したことが、報じられた。米大統領に就任もしていないトランプ氏の“自宅”を訪問したことで、米政府から異議が出されるなど波紋を呼んだ。この時の会談内容は、現在に至るまで漏れていない。
この安倍-トランプ会談の直後から、カジノ法案成立に向けた動きが急加速する。11月30日に衆議院内閣委員会で審議が開始されると、わずか6時間の審議時間で12月2日には委員会で可決され、6日には衆議院本会議も通過、7日には参議院で審議入りした。
この法案、そもそも2013年12月に議員立法で提出されたもので、3年間も“店ざらし”にされていたものが、何故、10日程度で成立したのか? 附帯決議(案)には、「法第五条に定める必要となる法制上の措置に検討に当たっては、十分に国民的な議論を尽くすこと」と盛り込まれているにも関わらず。
確かに、トランプ氏はカジノ・ホテルの運営会社トランプ・エンターテイメント・リゾーツを設立し、カジノ経営を行っていた過去を持つ。しかし、現在ではカジノ関連とは縁が切れているはずだ。ところが、トランプ氏の周辺にカジノに関係する人物がいる。それがシェルドン・アデルソン氏だ。
同氏はラスベガス・サンズ(カジノリゾート運営会社)の会長かつCEO(最高経営責任者)であり、ラスベガス、マカオ、シンガポールなどでカジノやリゾートを経営する不動産王。そして、ウクライナ移民の息子でユダヤ人である同氏の、もうひとつの顔がイスラエル(パレスチナ)にユダヤ人国家の再建を目指すシオニズム運動の中心人物というものだ。
同氏はロビー団体「全米シオニスト同盟」を結成し、親イスラエルの政治家に莫大な寄付をして、共和党の外交政策に強烈な影響力を与えてきている。大統領選挙中の5月6日、同氏はトランプ支持を表明、トランプ氏のスポンサーとなっている。
人種差別発言が多いトランプ氏だが、実はユダヤ人とは何かとつながりが深い。実娘のイバンカさんはユダヤ人と結婚、イバンカさん本人もユダヤ教に改宗している。トランプ氏自身も、83年にユダヤ民族基金から米国とイスラエルの関係への貢献を称えられて表彰されており、04年にはニューヨーク五番街で行われたイスラエルを応援するパレードでグランドマーシャルも務めた。
もし、日本でカジノを運営するならば、そのノウハウを含めて、大手のカジノ運営会社の関与が絶対に必要になると言われている。
アデルソン氏のラスベガス・サンズこそが、世界の大手カジノ運営会社の中で、もっとも日本でのカジノ運営に熱心であり、日本でのカジノ解禁を推進するIR議員連盟(カジノ議連)に対するロビー活動でも、ほかのカジノ運営会社を一歩リードしていると見られている。
では、日本でカジノ法案の審議が佳境を迎えていた米国現地時間6日、トランプ氏は面識もない日本の一介の経営者に過ぎない孫氏と何故会談を行ったのだろうか?
もともと、アデルソン氏はカジノ・ホテル業に進出する前のビジネスのひとつに、コンピュータ関連の展示会のCOMDEXがあった。COMDEX(コムデックス)は世界最大級のコンピュータ関連展示会だったが、95年に同氏はコムデックスを売却してしまう。そのコムデックスを8億6200万ドルで購入した人物こそが、ソフトバンクグループの孫正義社長その人だった。つまり、孫社長はトランプ氏と面識はなかったものの、アデルソン氏を通じて、両者は関係していたのではないだろうか?
こうした一連の物事の流れを見ると、安倍首相がトランプ氏を訪問したこと、その直後から日本でカジノ法案成立に向けた動きがスピードアップしたこと、孫氏がトランプ氏と会談したこと、これらはトランプ氏の大統領選挙における後ろ盾だったアデルソン氏という人物を核としてつながってはいるようにみえる。そう見てしまうのは、筆者だけだろうか?
いずれにせよ、15日未明、ギャンブル法案は成立した。
(文=鷲尾香一)