偽ギプス、休日出勤など、あの手この手……韓国“秋夕うつ”は嫁だけじゃなかった?
イメージ画像 Photo By Republic of Korea from Flickr.
今年も9月26~29日まで“秋夕(チュソク)”の大型連休に突入した韓国。秋夕といえば、日本のお盆休みと同様、全国に散らばった家族が故郷へ戻り、家族や親戚一同で食卓を囲みながら楽しい時間を過ごすのが一般的なのだが、近頃、秋夕を苦痛と感じる韓国人がどんどん増えているという。
昔から、韓国の既婚女性にとって秋夕はストレスでしかなかった。夫の実家に帰省し、一日中料理を作り、膨大な量の皿洗いをこなさなければならない。おまけに、姑や小姑、さらにはその親戚連中からの嫌みに耐えたり気を使ったりと、精神的にも疲れる。ある調査によると、秋夕連休明けの離婚率は普段の20%、夫婦ゲンカは60%も増加するらしい。そんなこともあって、最近の韓国の若妻たちは、手段を選ばず、秋夕ストレスから必死に逃れようとしている。
例えば、昨年から人気なのが「偽ギプス」。もともとハロウィーンなどのパーティーグッズなのだが、これを腕や足に付けて帰省し、家事ができないふりをするというもの。まるでコメディドラマに出てきそうな話だが、実際にお正月や秋夕時期になると20~30代女性からの注文が殺到、売り上げが2倍にアップするという。ネット上には「前回使ってしまったので今回は無理ですが、まだ使ったことのない方はぜひオススメ!」といったコメントが並び、中には「旦那さんと一緒に付けて『帰省の途中、事故に遭った』と言えば効果100%」というアドバイスも。ちなみに、帰省時の長距離ドライブが負担になる夫自ら購入する場合もあるそうだ。
また、帰省そのものを避けるために、休日出勤を申し出る女性も多い。ソウルの某総合病院では、今年の秋夕休み中の当直のほとんどが、既婚の女性医師や看護師になっているという。連休中1日でも当直勤務をすれば、それを言い訳に帰省せずに済む。連休中、上司は出社しない確率が高いので、大手企業に勤める既婚女性たちには「夫の実家に行くより、休日出勤したほうが気は楽」という認識が広まっているらしい。
秋夕がつらいのは、既婚者だけではない。最近は、フィギュアやぬいぐるみ、ゲーム機など、大事なコレクションをめぐって親戚とトラブルになる未婚男女も多いという。甥っ子・姪っ子に泣きながらコレクションの一部をねだられると、「たかがおもちゃでしょう、譲ったらどうだ」と親戚に言われ、ブチ切れてケンカになることも。ネット上では「ジョカモン(甥っ子とモンスターの合成語)」という新語まで誕生し、“ジョカモンからコレクションを守る方法”といった書き込みがあふれているほどだ。
いくら親戚とはいえ、年に1~2回しか顔を合わせないのに、プライベートなことをしつこく問われるというのは、もはや珍しい話でもない。今年、韓国のTwitterでは、周りに不愉快な気分を与える言動を慎もうという「秋夕マナーキャンペーン」まで行われている。バイトや勉強を理由に帰省しない若者も多く、ある大手外国語スクールが、連休中「秋夕避難場」と名付けた勉強ルームをオープンし、無料で場所と食料を提供したところ、始まる前から大好評だった。秋夕を苦痛に感じるのは、主婦だけでなく若者も同じらしい。韓国の秋夕風景は、この先、ますます変わっていきそうだ。
(文=李ハナ)