地震に“助けられた”ジャニーズファンクラブ問題、会員の怒り収まらず……
ジャニーズ事務所は、公式ファンクラブを運営する「ジャニーズファミリークラブ」に対して消費者契約法に抵触するという指摘があったことを受け、来年、一部規約を改定する方針だという。
実はこの件、11月22日にテレビの報道番組で伝えられる予定だったところ、当日の午前6時ごろに起きた福島県沖の地震報道に差し替えられていた。
当日はほかに、APEC開幕や原発いじめの問題、各地の市役所に爆破予告があったことなどが伝えられる予定だったが、各情報番組は大幅に内容を変更。福島県などで震度5弱を観測した直後、東日本大震災後初めて同県に津波警報が出されたことで、これを伝える緊急速報に変わった。
ある意味、ジャニーズの不祥事とも受け取れる話が、災害に救われる形で大きな報道にならなかったわけだ。
問題のファンクラブ規約は、国が認定する名古屋市の適格消費者団体「消費者被害防止ネットワーク東海」が10月に「消費者保護の観点から不適切」と是正を求めていたもの。同クラブは入会金1,000円で、年会費は4,000円。その特典は主にコンサートチケットの優先申し込みで、人気グループのチケットを入手するために、ファンが家族や知人らの名義も合わせ、ひとり何口も入会していることで知られる。
しかし、ファンクラブの規約はかなり殿様商売の色が濃く、ファンクラブ側が予告なく規約を変更でき、「理由の如何を問わず」支払い済みの会費返還もできないとし、損害賠償請求などの権利行使もできない。入会者がファンクラブの意向にすべて異議なく従うか、たとえ不満があったとしても黙って退会するしか選択肢がないようなものとなっている。
形式上、このファンクラブは「ジャニーズタレントを応援する公式団体」という、事務所とは別組織となっており、「問題があっても事務所は責任を一切負わない」とする文言もある。こうしたワンサイドな商法ゆえ、ファンたちが「タレントは好きでも、事務所は嫌い」という風潮を生みやすく、その結果がSMAP解散騒動で急増した事務所バッシングでもあった。
「規約に“特典内容が随時変更される”と書いてあって、嫌なら退会で、その場合でも会費は1円も戻らないっていうから、えげつないです。何かファンクラブの落ち度で問題があっても、こっちは黙って我慢するだけで、実際に不当な手数料を取られたままという人もいます。今までは、みんな『お布施』と言って我慢してきたことですが、SMAP解散が決まってからは『一緒に抗議しよう』という風潮になって、5月ごろからファン同士で連携も生まれていました」(ファンクラブ規約への抗議活動をしているSMAPファンの38歳女性)
消費者契約法は、事業者と消費者の契約における、交渉力の格差による不適切な部分を是正させる目的で定められているもの。これに違反している場合、消費者ネットワークは事業者に差し止め請求訴訟ができる権利を持つため、この動きは天下のジャニーズ絡みでも、メディアは無視できない話だった。
ある情報番組のディレクターに聞いてみても、「前出の消費者被害防止ネットワーク東海の関係者や会員から、10月にファンクラブに対して出された“申入書”の詳細が届いており、動きがあったときに社会ニュースの範疇で取り扱うことになっていた」という。
実は筆者も地震当日の22日、TOKYO MXの朝の情報番組『モーニングCROSS』に出演した際、本件についてコメントする予定だった。これは、ニュースの注目度を調べる研究機関の調べで、女性の注目したニュース1位となっていたからで、各市役所への爆破予告(2位)よりも注目されていた。しかし、地震の発生により被災状況などを速報したため、こちらでも詳しく触れることはできないままだった。
とはいえ、問題が解決したわけではなく、消費者被害防止ネットワーク東海は引き続きこの問題に取り組む動きを見せている。前出ファンは「ファンクラブといっても優先予約ができる以外、ほとんど活動らしい活動はないので、ジャニーズは濡れ手で粟のボロ儲けだと思います。規約以前に、このクラブ自体がファンを大切にしている商売ではないので、徹底追及すべき。今まで不当に払いこんでしまったファンは全員、返金を受けるべきです」と厳しい。
こうした抗議は特にSMAPファンの間で高まっていて、年内で解散するSMAPはファンクラブ自体も同時に解散することが決まっているため、「規約改定が来年なら、SMAPファンは不当な規約のまま捨てられる」という憤りも聞かれる。報道では大きく扱われずとも、不当な規約への怒りを感じたファンの気持ちは収まっていない。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)