“霊性の震災学”と共鳴する樹海奇譚『追憶の森』自殺の名所でマシュー・マコノヒーは何を見た?
<p> タクシー運転手は不思議に思った。初夏にもかかわらず、女性客は厚手の冬服を着ていたからだ。行き先を尋ねると、女性客は被災の激しかった地名を告げた。運転手が「あそこはもう更地ですよ」と答えると、女性客は「私は死んだのですか?」と呟き、その姿を消した。今年1月に刊行されて話題を呼んだ『呼び覚まされる霊性の震災学』(新曜社)では、被災地のタクシー運転手たちが震災後に不思議な体験をしていること、また運転手たちはこの幽霊現象で出会ったお客たちに敬意を払っていることを伝えている。東北学院大学のゼミ生たちが『霊性の震災学』の調査をしていた頃、米国でも死生観をテーマにした一本の映画の製作が進んでいた。ガス・ヴァン・サント監督の『追憶の森』(原題『The Sea of Trees』)がそれだ。『追憶の森』では心に傷を負う米国人が、日本で不思議な体験をすることになる。『霊性の震災学』に通じるものを感じさせる。<br /> </p>