“麻薬女王”逮捕で「薬物汚染国家」回避なるか? 韓国・最新薬物事情
イメージ画像(Thinkstockより)
8月29日、韓国法務部は、大量の麻薬を国内に流通させていたとみられる女(41)が、6月にアメリカ・ロサンゼルスで現地警察に逮捕され、強制送還手続きが進行中であることを明らかにした。
女は過去数年にわたる韓国内の麻薬流通の胴元で、関係者からは“麻薬女王”と呼ばれている。自らを“アイリス”と名乗り、インターネットやチャットアプリなどを利用して、違法薬物を蔓延させていたとみられている。2015年以降、警察に逮捕された薬物依存者の多くが、「アイリスから買った」と供述していたことから、マークされていた。
それだけ注目を集めていた女が捜査の目をかいくぐっていたのは、その周到な計画性にある。女は、アメリカや中国など多くの中継点を経由させ、自身が直接動くことはなく、インターネット上での接触も海外サーバーを利用するなど、徹底して痕跡を隠していたため、追跡が困難だった。
また、韓国内での供給方法も、無人の公民館などに配送して、依頼者がそこまで取りにいくという方式を取っていたため、捜査を難航させた。結局、女は追跡から1年以上も逃げ延びることができたのだ。ちなみに、女が使うハンドルネーム“アイリス”といえば、09年に韓国内で大ヒットを記録したスパイドラマと同じ。神出鬼没な女は、さながらスパイのようだった。
一方、今回の逮捕に韓国ネット民からは「韓国女は世界中で体を売るだけではなく、今は違法薬物まで流通させて国をおとしめるんだな」「違法薬物根絶のために、アメリカで銃殺刑にしてくれよ」などと、怒りの声が多く上がっている。
麻薬女王の逮捕で、がぜん注目される韓国の薬物事情だが、実情はとても深刻だ。8月22日に発表された「2015麻薬類犯罪白書」によると、韓国では昨年度取り締まられた薬物絡みの犯罪が、過去最高を記録した09年度の1万1,875人を超える1万1,916人となった。16年に入ってもその勢いは衰えず、1~6月の間だけで、昨年度より30%以上急増しており、このペースなら年内に1万5,000人を超える見込みだ。
韓国検察は「違法薬物増加の原因は、インターネットの普及により、売人と簡単に接触できるようになった上、金のやりとりも直接行わなくてよくなったから」だと分析している。事態を憂慮した韓国政府は、今年4月からインターネット上での違法薬物取り締まりを強化しているが、根絶はやはり難しいようだ。
麻薬女王の逮捕は、韓国内の薬物汚染を多少は改善することができるのだろうか?