「映画」の記事一覧(37 / 42ページ)

世にも美しい図鑑、ドキュメンタリー『凍蝶圖鑑』ここはセクシャルマイノリティーが集う夢の楽園

<p> とても美しい図鑑をめくっているような気分になる。ドキュメンタリー映画『凍蝶圖鑑』は“いてちょう ずかん”と読む。凍蝶とは、草陰に隠れて越冬する蝶のこと。幻想的な美しさと生命のはかなさ、そしてたくましさを感じさせる言葉だ。ただし、『凍蝶圖鑑』は図書館に並んでいるような昆虫図鑑ではない。同性愛者、トランスジェンダー、ドラァグクイーン、</p>

『ベイマックス』日本文化へのリスペクトに涙──2015年は、お正月映画が熱い!!

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(C) 2014 Disney. All Rights Reserved./配給: ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

 2015年お正月映画を特集する今回は、幅広い世代が楽しめる多彩な魅力の話題作から、小粒ながらも強烈なインパクトを放つ力作まで、個性的な4作品を紹介していきたい(いずれも公開中)。

 『ベイマックス』(2D/3D上映)は、ディズニー映画史上最も強く日本文化への敬愛が表現された長編アニメ。サンフランソウキョウに暮らす14歳の天才少年ヒロは、火災で命を落とした兄が遺したケアロボット「ベイマックス」に支えられ、失意から回復する。兄の死にかかわる陰謀を知ったヒロは、ベイマックスに戦闘用の装備とプログラミングを加え、兄の研究仲間と共に巨悪に立ち向かうが――。大きくてフワフワなベイマックスと日系人を思わせる主人公の関係が『となりのトトロ』(1988年)を参照していることをはじめ、日本のポップカルチャーへの言及、サンフランシスコと東京をミックスしたような未来都市など、日本人が見たら嬉しくなる要素が盛り沢山だ。

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高倉健主演のワーナー作品『ザ・ヤクザ』がDVD化 健さんがハリウッド映画に与えた影響とは……?

<p> 昭和は遠くになりにけり。日本映画界を代表するスター俳優・高倉健さんが11月10日に、菅原文太さんが11月28日に相次いで亡くなり、そんな言葉を思い浮かべた人も少なくなかっただろう。年末最後ということで12月23日にDVDが再リリースされた高倉健さん主演のハリウッド映画『ザ・ヤクザ』(74)を振り返</p>

行定勲監督が“原作モノ”映像化の真価を見せる『真夜中の五分前』

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(C) 2014 “Five Minutes to Tomorrow” Film Partners

 今回取り上げる最新映画は、コミックと小説、それぞれ人気の高い原作を見事に映像化した邦画2作品。原作との比較はもちろん、キャスティングの妙、脚色の技など見どころいっぱいの話題作だ(いずれも12月27日公開)。

 『海月姫』は、「Kiss」(講談社)に不定期連載中の東村アキコの人気コミックを、『ホットロード』(2014年)の能年玲奈主演で実写映画化した娯楽作。クラゲを偏愛するオタク女子の月海(能年)はイラストレーターを志すも、部屋にこもってクラゲの絵ばかり描いている。彼女が住むボロアパート「天水館」には、鉄道や三国志など各自のオタク道を追求し、恋愛ともオシャレとも無縁の女子5人がゆるい共同生活を楽しんでいた。月海はある日ペットショップで華麗な美女に助けられるが、その正体は女装趣味のある蔵之介(菅田将暉)。蔵之介が天水館に出入りするようになり、月海の生活も少しずつ変化するが、そんな折、天水館が再開発による取り壊しの危機に直面する。

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アナルの国からやってきた『バッド・マイロ!』カルト映画を過激&ポップに換骨奪胎しちゃった!

<p> 桃太郎は桃から生まれ、ドラえもんはのび太の机の引き出しから現われ、メリーポピンズは空から舞い降りてきた。人気キャラクターはどこから登場するかがとても重要である。その点、『バッド・マイロ!』のマイロくんは人気キャラクターになりえる条件を楽々とクリアしている。黒目がちなつぶらな瞳に、ぬるッとした肌色のボディが印象的なマイロくんは、生温かい臭いと共に人間のケツの穴から這い出てくるのだ。しかも、このマイロくんはちっちゃい体ながら、宿主である人間が潜在意識で嫌っている人たちを次々と噛み殺してしまう凶暴キャラ。最近のゆるキャラブームに食傷気味の方にぴったりなゆるキャラならぬ、きつキャラなのだ。</p>

“伝説の俳優”松田優作の魂を受け継ぐ『百円の恋』デブニートが放つ、下流人生から起死回生の一撃!

<p> 熱い映画だ。体中のアドレナリンがざわめく、見る強壮剤と言っていい。見終わった瞬間に、劇場から走り出したくなる。11月から公開されているロードムービー『0.5ミリ』で“映画菩薩”と化した安藤サクラが、最新主演作『百円の恋』では“女阿修羅”へと変貌を遂げる。本作で安藤サクラ演じるヒロイン・一子が戦いを挑む相手は“人生に対する諦め”だ。たぷたぷしたお腹の贅肉にきっぱり別れを告げ、自分の前に立ち塞がる“どう</p>

サンリオ映画『くるみ割り人形』がディズニーに“丸乗り”宣伝も大惨敗で……

YouTube 映画『くるみ割り人形』予告編より

 11月29日に全国公開されたサンリオ製作の映画『くるみ割り人形』。ハローキティ40周年記念作品とあって、絶対にコケるわけにはいかないと、公開前からプロモーションに力を入れていた。

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早くもアカデミー賞有力候補との呼び声! 鬼才デビッド・フィンチャー『ゴーン・ガール』

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『ゴーン・ガール(c)2014 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

 今週取り上げる最新映画は、早くもアカデミー賞有力候補の呼び声高いデビッド・フィンチャー監督による話題作と、ピーター・ジャクソン監督が手がける冒険ファンタジーシリーズの完結編。どちらも、映画館で鑑賞すれば一層楽しめること請け合いの傑作だ。

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自分が愛した女は一体何者だったのか? フィンチャー作品の主題が詰まった『ゴーン・ガール』

<p> 暗い、陰鬱な映画ばかり撮っているデヴィッド・フィンチャー監督は、なぜこんなに人気があるのだろうか。洗練されたビジュアルとは別に、フィンチャー作品にはある共通項がある。それは人間や社会に対する不信感を、真正面から描いているということだ。誰も信じられないこの世界で、それでも『ファイト・クラブ』(99)のタイラー(ブラッド・ピット)や『ドラゴン・タトゥーの女』(11)のリスベット(ルーニー・マーラ)らは自分たち</p>

やっぱり人間がいちばん怖い……!! 韓国ホラー『ブラインド』がヤバすぎた

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↑これは映画のシーンではなく、ゾンビアイドル小明です
(撮影=尾藤能暢)

 孤児院育ちで警察大学実習生のスア(キム・ハヌル)は、実習中に手錠を使い、深夜のクラブに入り浸る弟のようにかわいがっていた青年を強引に施設に連れ戻そうとするが、その道中で事故に遭い彼を死なせ、自らも視力を失ってしまう。盲人となったスアは盲導犬のスルギと共に、なんとか日常生活をこなすも、警察大学への復学は断られ、生活は試練の連続だった。

 そんな中、スアは偶然乗ったタクシーで再び事故に遭う。若い女性を轢いた運転手は「犬を轢いただけ」と言ってトランクに女性を詰め込むが、音に対して人一倍敏感になっているスアにとって、それが犬を轢いた音ではないことは明白だった。

 警察に駆け込み、チョ刑事(チョ・ヒボン)に事態を伝えるも、「盲人の目撃者なんて」と相手にされない。しかし、スアの「座席のシートが皮だったから模範タクシー」「病院の匂いがしたから前に乗ったのは医療関係者」という鋭い洞察力と記憶力で、犯人像はどんどん浮き彫りに。そして数日後、偶然その事故を目撃した不良少年のギソプ(ユ・スンホ)が現れ、「タクシーじゃなく外車だった」と証言をする。

 食い違う2人の証言を照らし合わせ、捜査班は順調に真犯人に近づいていくが、真犯人もまた、2人の目撃者に近づいているのだった……。

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(c)MoonWatcher & Next Entertainment World inc.All Rights Reserved.

 盲人である主人公のスアは、前半では外に出れば「盲人は外に出るな!」と罵られ、タクシーは延々割り込まれていつまでたっても乗れず、完全に社会的弱者として描かれているんですが、二度目の事故に遭ってからは、視力を失って敏感になった聴覚・嗅覚・触覚を駆使することによって警察と対等な関係になり、後半では“あるトリック”を使って完全に犯人との立場を逆転させて強者となっていくさまが非常に爽快でした! そしてそれと同じくらい不快なシーンもてんこもり!

「あ、生理的にこの映像を見続けることができない」と思わせるリアルな暴力描写が魅力の韓国ホラーですが、『ブラインド』もなかなかでした……。特に盲導犬のスルギのシーンは総じてすごかったです。スルギがもう上手くて上手くて、ラブラドール・レトリバーの持つかわいいポイントをフルに出してくるんですよ! 大型犬を飼っている人間からしたら、もう辛抱たまらん!! そして、こういう、物語の救いになるような正義の脇役っていうのは、なぜかしら始めから残念なフラグが立ちまくっていて、そのフラグは目を覆うような演出で「これでもか」と回収されていくんですよね……。もう、涙で画面が見えなかったよ……!

 そして生理的に一番「ウヘェー」となったのが、犯人の異常性欲のおぞましさ! 普段は温厚を装ってるのに、警察に追われていようと、体が半分燃えようと、まだ真顔で股間のチャック開けて女をレイプしようとするんですよ……。思考回路が理解不能すぎて戦慄します。韓国映画はこういうサイコパスを撮るのが本当にうまいですよね。

 大森キネカでの『ホラー秘宝まつり』のホラー総選挙では、数あるホラー映画を差し置いて一位を獲得した『ブラインド』。地球に子作りに来るエイリアンよりも、地球滅亡を狙って復活してくる悪魔よりも、やっぱり身近に潜んでる話の通じない人間が一番恐いということでしょうか……。確かに、エイリアンだって悪魔だって、一応理由があって行動しているのに、人間は温厚な顔の裏で、何を考えているかわからないですもんね。連載やレギュラー番組は笑顔で切られるし、ギャランティや原稿料は踏み倒されるし、「一生応援します!」とか言ってたファンは平気で他のアイドルに乗り換えまくるし……考えれば考えるほど死にたくなるから、私はゾンビになったのかもしれません……。ちょっと話がそれましたが、結論としては、人間って最低!! 犬こそ至高!!!
(文=小明)

●『ブラインド』
http://kingmovies.jp/library/kixf-229
12/10(水)Blu-rayDVD発売
発売・販売元:キングレコード
Blu-ray:¥4,800+税/DVD:¥3,800+税

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●小明(あかり)
1985年、栃木県生まれ、千葉県育ち。02年、ホットドッグプレスドリームガールズ準グランプリを受賞し、デビュー。写真集『エプロン宣言』を発表するなど、グラビアアイドルとして活動していたが、06年に所属事務所を退社。以降、フリーのアイドル兼コラムニストとして活動しつつ、ゾンビアイドルとしてテレビ・映画に出演中。著書に『アイドル墜落日記』(洋泉社)、キングオブコメディ・高橋健一との共著に『卑屈の国の格言録』(サイゾー)。ネットテレビ『小明の副作用』(サイゾーテレビ)出演中。

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