「20パンドラ映画館」の記事一覧(7 / 14ページ)

2つの冤罪事件の命運を分けたのは何だったのか? 司法が犯した重大犯罪を暴く『ふたりの死刑囚』

<p> 半世紀近くにわたって冤罪と闘い続けた2人の死刑囚がいる。ひとりは再審の扉が開かれて拘置所を出ることを果たしたが、もうひとりは再審を却下され無念の獄中死を遂げた。日本の裁判システムの中でなぜ冤罪は起きたのか。そして、2人の死刑囚の運命を分けたものは何だったのか。独自路線を突き進む東海テレビのドキュメンタリー『ふたりの死刑囚』は昭和36年(1961)に起きた「名張毒ぶどう酒事件」、昭和41年(1966)に起きた「袴田事件」という2つの冤罪事件を追い、司法界が抱える問題点をくっきりと明るみにしている。<br />
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世間の常識よ、直下型ブレーンバスターをくらえ!! 障害者プロレス四半世紀の激闘を刻む『DOGLEGS』

<p> 心の中の万里の長城がドミノ倒しのように音を立てて崩れ落ちていく。天願大介監督のドキュメンタリー映画『無敵のハンディキャップ』(93)にはそのくらいの衝撃を受けた。身障者たちがリングに上がり、障害を抱えた肉体を武器に激突する姿は、観る者の固定観念を粉々にしてしまうパワーがあった。身障者同士の闘いだけで充分刺激的なのに、さらに強烈なのが障害者プロレスのエース・サンボ慎太郎と健常者であるアンチテーゼ北島とのガチンコバトルだった。障害者プロレス「ドッグレッグス」を立ち上げた北島と慎太郎は無二の親友だが、リング上で北島は容赦なく慎太郎をボコボコにした。全身キズだらけになりながらも慎太郎は北島に食らいついた。勝ち負けを超えた感動がそのリングにはあった。だが、『無敵のハンディキャップ』の上映が終わっても彼らの闘いはまだ終わっていなかったのだ。ニュージーランド出身の映像作家、ヒース・カズンズ監督のデビュー作となる『DOGLEGS』は慎太郎たちのその後の激闘の歴史を追い、また障害者レスラーと障害者プロレスに新しい時代が訪れていることを告げている。<br />
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ヤクザのいない清潔な街は本当に居心地いいのか? 東海テレビのドキュメンタリー『ヤクザと憲法』

<p> ヤクザには人権は認められないのか。日本国憲法にはすべての日本国民は基本的人権と平等が守られることが明示されているが、ヤクザには適用されないのか。2004年から2011年にかけて暴力団排除条例(暴排条例)が全国で施行され、ヤクザたちの生活は追い詰められている。暴排条例は社会から暴力団を締め出すことを目的としたもので、一般市民が暴力団と関わることも規制している。だが、そのために暴力団の構成員は銀行口座をつくれず、小学校に通う子どもの給食費を振り込むこともできない。子どもが通う幼稚園の行事に参加できないだけでなく、子どもまで幼稚園からの退園を余儀なくされた。そんな笑えない事態が生じている。ヤクザを排除してクリーンになった街は、本当に住み心地がよいのか。『男はつらいよ』でテキヤ稼業をしていた寅さんが転職を迫られる世の中は歓迎すべきものなのか。東海テレビ製作のドキュメンタリー『ヤクザと憲法』は、ヤクザたちの日常生活を通して日本国憲法の在り方を見直そうという野心的な作品となっている。</p>

静脈注射によるトリップ演技があまりにヤバい! 乞食美少女の純愛ドラマ『神様なんかくそくらえ』

<p> クリスマスケーキも神の祝福もいらない。家族や家がなくてもヘッチャラ。『神様なんかくそくらえ』(原題:HEAVEN KNOWS WHAT)のヒロインを演じたアニエル・ホームズは、タフでワイルドな女の子だ。住所不定の彼女はNYのストリートで生きてきた。職業は物乞い。街ゆく人たちに「小銭をちょうだい」とおねだりし、後は廃品や盗品をうまく活用してサバイブしてきた。顔立ちは整っているが、指先はひどく汚い。世間の常識や法律に縛られない、野生動物のような危うい魅力の持ち主だ。そんな彼女の傷だらけの恋愛青春ストーリーが本作では描かれる。少女コミック原作の毒気のない実写映画で賑わう日本映画とはまるで毛色が違う。<br />
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地縁血縁とは異なる新しい家族の形。ロッキーのもとに集う“荒ぶる魂”たちの物語『クリード』

<p> フィラデルフィアのダメボクサーが全力で人生の扉をこじ開ける『ロッキー』(76)から、人生は死ぬまで闘いであることを描いた『ロッキー・ザ・ファイナル』(06)に至るまでのシリーズ全6作のうちのどれか1本でも観たことのある人なら、いや主人公ロッキー・バルボアの名前を一度でも耳にしたことのある人なら、誰もがこの物語を通してロッキーファミリーの一員になることができる。『ロッキー』シリーズの新章となる『クリード チャンプを継ぐ男』は、そんな不思議な力を秘めた映画だ。世界中の人々の心を沸き立たせた往年の人気ボクサー・ロッキーのもとに、自分の居場所を見つけることができずにもがき苦しむ若者が弟子入りを志願し、親子関係とも会社組織とも異なる新しい家族像が生み出されていく。</p>

会議は全員オムツをはいて出席せよ!? オーナー一族への忠誠を強いる財閥社会の異様さ『ベテラン』

<p> サム・メンデス監督の『007 スペクター』(公開中)が洗練された娯楽映画の極致ならば、それとは真逆の味わいが楽しめるのがリュ・スンワン監督の『ベテラン』だ。『007』シリーズと同じくアクション映画だが、刑事ドラマである本作はとことん泥くさく、汗くさい。主人公である刑事たちはまるでドブすくいするかのように、現代社会の闇の部分に手足を突っ込むことになる。スタイリッシュなかっこ良さには無縁の主人公だが、汗だくでキムチ鍋を食べ終えた後のような爽快さのあるエンディングが待っており、韓国で1300万人を動員する大ヒットとなった。</p>

世界一のプレイボーイが“ヤリチン”から卒業か!? 男が生き方を改めるとき『007 スペクター』

<p> 自由奔放に生きてきた男が、生き方を改めるときが来る。職場で責任ある仕事を任されるようになったとき、肉体的もしくは精神面での変化が生じたとき、そしてマジで惚れた女ができたとき。多くはこの3つのケースのどれかか、もしくはそれらの要素が複合した場合だろう。シリーズ最高傑作と評されている『007 スペクター』は、“世界一のプレイボーイ”として知られたジェームズ・ボンドがそれまでのライフスタイルを改める大転機作となっている。</p>

安楽死マシンを発明したジイサンに注文が殺到! 尊厳死コメディ『ハッピーエンドの選び方』

<p> 人間の一生は長い長い、ひと幕ものの即興劇だ。喜劇にしろ悲劇にしろ、多くの共演者やスタッフに支えられることで充実した舞台となる。千秋楽を迎えた主演俳優なら誰しも思うだろう。できれば共演者やスタッフにさりげなく感謝の意を示し、自分にふさわしい幕引きにしたいと。イスラエル映画『ハッピーエンドの選び方』は人生のフィナーレを病院の決まり事や法律に縛られることなく、自分たち自身の手で決めることを願うおじいちゃんおばあちゃんたちの奮闘を描いたもの。尊厳死や安楽死という身体がピンピンしている間は考えることが少ない題材に、ユーモアを交えてマジメに向き合った作品となっている。</p>

食人族にカルト狂団!! 阿鼻共感のイーライ・ロス祭り『グリーン・インフェルノ』『サクラメント』

<p> あまりにもおぞましい地獄絵図は、観る者の身の毛を逆立たせるだけでなく、同時にトラウマ級の感動も与えてくれる。超絶ゴーモン映画『ホステル』(05)で知られるイーライ・ロス監督の『ホステル2』(07)以来となる監督作『グリーン・インフェルノ』は、まさに極彩色の地獄エンターテイメント。自然保護を訴える意識高い系の大学生たちがジャングルに足を踏み入れ、言葉の通じない人喰い族に生きたまま手足を千切られて食べられてしまうという超ブラックな内容だ。悪趣味もここまで極まれば、お見事というしかない。さらに同日公開されるのが、イーライ監督が製作&共同脚本を手掛けた『サクラメント 死の楽園』。1978年に南米ガイアナで起きたカルト教団集団自死事件を再現したドキュメンタリー仕立ての作品で、教祖の指示によって信者914人が服毒死を遂げたというリアルな狂気にさぶいぼが立つ。イーライ監督がスカイプで寄せてくれたメッセージを交えながら、とんでも映画2本を紹介しよう。</p>

人生を変えてしまう快心のエッチがここにある!? 黒川芽以主演コメディ『愛を語れば変態ですか』

<p> 人は誰かを愛するとき、その人は変態になる。愛を知った人は、常識や世間体という拘束着を脱ぎ捨て、すっぽんぽんの変態となる。社会生活を営む頭でっかちな人間から、本能まるだしな野生動物へと変態を遂げる。野生の力を取り戻した変態は、拘束着を脱ぐことができない人間よりも圧倒的に魅力的だ。黒川芽以主演のコメディ映画『愛を語れば変態ですか』は、平凡な人妻あさこが自分は変態であることを受け入れ、無敵の存在へと覚醒していく姿を描く。CGなどを使うことなく黒川芽以は、怪作『LUCY/ルーシー』(14)のスカーレット・ヨハンソンばりに変身することになる。<br />
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