「普通の汗」「冷や汗」「脂汗」は全部同じ成分だった! 意外と知られていない、汗のメカニズム
イメージ画像(足成より)
まだまだ暑い日が続く日本列島。汗っかきにとっては悩ましい季節だ。日中に外に出ようものなら、一瞬で汗だくになることも多い。噴き出る汗を何度も拭ううちにハンカチもびしょびしょになる。いっそ汗をかかない体がほしい――。そう思う人も少なくないだろう。
しかし、汗の専門医として過去30年近くにわたって多くの患者を診てきた五味クリニック院長・五味常明氏は「汗は大いにかくべき」だと主張する。
「恒温動物であるヒトは、汗をかくことで体温調整をしているんです。もし汗をかかない体になると、代謝で発生した熱によって体温がどんどん上昇し、45℃前後で死に至ります」(同)
五味先生によれば、汗の成分は99%以上が水。そこにわずかな量の塩分が含まれ、さらに微量なカリウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、重炭酸イオンなどのミネラルや電解質が混じっているという。
「水に近ければ近いほど、体温調整の効率がよい汗です。よい汗の特徴はサラッとしていて、肌の上ですぐに乾く上に、におわないこと。逆に体温調整の効率が悪く、体に必要なミネラルを多く含むのが悪い汗で、ベトベトしている。舐めると、しょっぱかったり、酸っぱかったりします」
舐めて味がしたら、健康面で黄色信号なのだ。ところで、暑い時にかく汗のほかに、緊張した時にかく冷や汗や脂汗もある。これらも、同じ成分の「汗」なのだろうか?
「汗には、暑い時にかく温熱性発汗、緊張した時にかく緊張性発汗、ストレスを感じた時にかく精神性発汗、辛いものを食べた時にかく味覚性発汗の4種類があります。冷や汗や脂汗は緊張性発汗と精神性発汗に当たりますが、成分はどれも同じですね」
どうやら、サラッとした「よい汗」をかくための体調管理に留意しつつ、暑い夏はあきらめて汗を拭き続けるしかないようだ。
「ちなみに、かいた汗は全部拭いちゃダメですよ。汗は皮膚上で蒸発することで体温を下げる働きを持っています。全部拭いてしまうと余計に多くの汗が出て、いつまでも止まらないことがあるんです」
皮膚面は、常にしっとりとした状態に保つのがベストなんだそうだ。また、制汗剤はワキや足以外の場所に使用すると、熱中症の危険性が高まるそうなので、ご注意を。
(取材・文=石原たきび)