撮影=後藤秀二
お笑いコンビ、キングコングの西野亮廣が仕掛ける新たなイベント『サーカス! – Smile Academic Crazy Unique School -』が9月21日(土)に開催される。これは、大谷ノブ彦(ダイノジ)、中田敦彦(オリエンタルラジオ)、吉田浩一郎(株式会社クラウドワークス代表取締役社長兼CEO)、はあちゅう(ブロガー・作家)、倉本美津留(放送作家)、西寺郷太(ミュージシャン・音楽プロデューサー)といったジャンルレスなメンツが講師となり、勉強の面白さを伝えるイベントだとか。そんなイマイチつかめないこの催しの狙いを、校長を務める西野に訊いた。
――そもそも、このイベントをやろうと思ったのは?
西野亮廣(以下、西野) いや、なんか思いついてこんなんやろうかなぁって話してたら、大人の人が動いてくれたっていう感じですね。
――軽いノリで始めたんですね。
西野 いつもそうですよ。飲み屋で話が始まる感じで。僕、学生の頃は勉強ができなかったんですよ。学年でもビリのほうで。不良とか、不登校だったのなら言い訳もつくけど、学校自体は面白くて、毎日ちゃんと通っていたんです。でも、先生の言ってることが、なんもわからなくて。それで、勉強が嫌で吉本に入ったんですけど、そこでダイノジの大谷さんの音楽の話や、マキタスポーツさんのJポップの話、茂木(健一郎)さんの脳科学の話なんかを聞いてたら面白いと思って、家に帰ってからも調べたりするようになったんですよ。これって、勉強じゃないですか。
――確かに、学校以外で聞く専門的な話って面白いですね。
西野 それで、学生の時に、なんでこれができなかったんだろうって考えて。これって、先生のトーク力の差ちゃうかなって。歴史が好きな芸人なんかは、戦国武将のことを「どんな人なの?」ってこっちが聞くと、「SMAPでいうと~」って例えてくれるんですよ。すごい簡単な言葉で通訳してくる。これを、学校の先生は、やってくれなかったんじゃないかなぁって。黒板のほう向いて「何ページから何ページまで読め」って言われたって、全然面白くないじゃないですか。大事なポイントでは声を張るとか、そういう技術を身につけないまま、先生になってしまっていると思うんです。
――芸人さんのトーク力はすごい、と。
西野 芸人はいくら面白いネタ書けても、トークが立たなきゃ表に出られないんですよ。ちっちゃい小屋のオーディションからずっと、おしゃべりを競争して、そっから誰が面白い、どのネタが面白いのかがようやく始まるけど、しゃべれなきゃネタもできない。学校ではそれをやらなかったので、おしゃべりがおもろいヤツが先生やったらええんちゃうかって。
――講師陣は、どんな内容を話す予定なんですか?
西野 ひとり15~20分くらいの持ち時間で、大谷さんだったら音楽、クラウドワークス・吉田さんだったら今の時代の仕事の仕方、はあちゅうちゃんはブログで稼ぐ方法とかですかね。中田は内容を教えてくれないですけど。
――校長も内容を知らない(笑)。
西野 倉本さんも知らないですね。僕が何を話してくれって言わなくても、面白い話をしてくれるから。
――くくりは「面白い話」ってことだけですか?
西野 ゲラゲラ笑える面白さだけじゃないですよ、もちろん。お客さんが興味を持ってくれるような話であれば、お任せって感じです。
――では、西野校長は何をするんですか?
西野 偉そうにしているだけですね(笑)。先生がしゃべった後に、生徒代表みたいな立場で「あれってどういうこと?」とか、質疑応答みたいなのを設けるので、その聞き役になります。
――お客さんのターゲットは、どういった層を想定してるんですか?
西野 大人ですね。あと、勉強コンプレックスがある人。クラウドワークス・吉田さんのお話なんかは、クリエイターの方が対象になってくると思うんですよ。僕、去年美大でゲスト講師やったんですよ。そこで、生徒さんが400~500人いたんですけど、作品発表するとしたら、個展したり、制作期間中の生活費だったり、画材買ったりと、お金が必要ですよね。そこで「みんな、そのお金をどうやって調達するの?」って聞いたら、やっぱりアルバイトなんですよ。お金ためて、グループでお金出し合って展示するとか、そんなのばっかり。
――まぁ、王道といいますか、定石ですよね。
西野 「そんなんやるよりも、クラウドファンディングで、個展やりたいって発信して、自分の作品見せれば、個展の宣伝にもなるし、作品の宣伝にもなるし、パトロンにリターンとして絵を描けば練習にもなるし、そっちのがバイトやってるよりよくない?」って聞いたら、全員クラウドファンディングを知らなかったんですよ。びっくりして、先生にも「なんで教えないんですか?」って聞いたら、先生たちもクラウドファンディングを知らない!
――ちょっと意外ですね。発表の場が限られていると。
西野 先生も知らないから、教えようがないんですよ。それで「ここで嫌われても構わないから、耳の痛い話をしてやろう」と思って、「美大の先生が(クラウドファンディングを利用した作品の発表を)実践できてたら、美大の先生になっていない。美大の先生は、絵で飯を食ってく方法を知らないから先生になっているんだ」とまで言いました。まぁ、後でめちゃくちゃ怒られましたけど(笑)。美大はもちろん、いいところですよ、技術は学べるし、お互い切磋琢磨できる。ただ、その後の生き方を教えてくれないんです。
――今回の『サーカス!』は、その生き方も学べる、と。
西野 ここに出てくれる人って、極端な生き方をしてるじゃないですか。そういう人って、社会のレールからちょっとはみ出してるんで、その中でなんとか生きようとして、すごい知恵を身につけているんですよ。友達にホームレスがいるんですけど……。
――ホームレスにまで交友関係を広めている(笑)。
西野 その彼がどうやってお金を調達するかっていうと、浅草寺なんかで煙を浴びるところがあるじゃないですか。その器のところに、五円玉を置くんですって。そしたら後に来た人は「ここにお金置くんだ」と思って、そこが小銭だらけになるんですよ。そこをごそっと頂くと。道徳的に良いか悪いかはさておき、こんなことって思いつかないじゃないですか! やるやらないは別にして、極限状態で絞った知恵や生き方を教えたいんですよ。
――空き缶集めるくらいしか、思いつかないですもんね。
西野 ホームレスは本当にすごい。そういったレールからちょっとはみ出した人から、いろいろ学んでほしいですね。
――講師の方を奇人変人扱いしてますけど、我々から見たら、西野さんもそっちの人に入ってますよ。
西野 だはは(笑)。僕、世間からは非常に嫌われるんですけど、実は人たらしなんですよ。そっちの人たちの懐に入ったり、口説いたりするのがうまいんです。
――それは、どこで身につけた技術なんですか?
西野 僕は大阪の新世界に住んでたんですけど、20~21歳くらいの頃は、本当にお金がなくて。でも毎日酒を飲みたいんで、新世界の居酒屋に片っ端から入って、怖そうな人の横に座って、しゃべって、話を聞いて、仲良くなったら頃合い見計らって「実は僕、今日ほんとにお金がなくて、おごってもらっていいですか?」って毎日やってました。新世界って変な奴ばっかだし、ヤバい奴らもいっぱいいて、そういう人を丸め込むことで、生きていく技術を身につけてきたんです。
――十分、講師としてやっていけますね。でも、ますます西野さんの本職はなんなのか、わかんなくなりますね。
西野 (笑)。めっちゃ言われるんですよ! 絵本を描いたら「芸人のくせに」って言われる。でも、これは参加人数の違いでしかないなって思っていて。芸人がグルメ番組に出て、コメントしても、「芸人のくせに」とは言われない。なぜなら、ここに参加している人数が多いから、これも芸人の仕事にカテゴライズされてるんですよ。絵本描いている芸人が少ないから、芸人の仕事として認められていない。もし、100人の芸人が絵本を描いていて、グルメがひとりだったら、芸人のくせにって言われるはグルメのほうだと思うんですよね。それで、もし現実にそうなったら、僕はグルメのほうに行くんですよ。自分しかやってないことやりたいと思うから、必然的に「芸人のくせに」ってなることばっかりなんですよね。
――だから周りから「西野がまた~」って言われると思うんですけど、それに対しては何か思うところはありますか?
西野 なんとも思わないですよ。誰かが僕のことをなんか言ってても、それはその人の課題であって、僕がその人に何かする気もないし、時間を割くつもりもないですから。時々、Twitterが炎上して、「Twiiterやめます」っていうタレントさんいるけど、アホちゃうかなって。タイムライン見なかったらいいんやから。わざわざそこにチャンネル合わせて傷ついてる暇があったら、もっと自分のために時間使ったらいいのにって思いますね。
――では、SNS全盛期の時代の生き抜き方の講師として、ぜひ。
西野 教えますけど、嫌われますよ(笑)。でも、毎日は楽しくなりますよ。仲がいいスタッフや芸人を集めて、「次はあれしよう! あれ? 失敗した! じゃあ、次はこっちだ!」って、毎日楽しいですから。『サーカス!』は、そんな楽しさを教えたいですね!
(取材・文=高橋ダイスケ)
●『サーカス! – Smile Academic Crazy Unique School -』
≪日時≫9月21日(日)17:30開場 18:00開校(20:00閉校予定)
≪場所≫品川プリンスホテル クラブeX
≪出演者≫
校長:西野亮廣(キングコング)
講師:大谷ノブ彦(ダイノジ)、中田敦彦(オリエンタルラジオ)、吉田浩一郎(株式会社クラウドワークス代表取締役社長兼CEO)、はあちゅう(ブロガー・作家)、倉本美津留
(放送作家)、西寺郷太(ミュージシャン・音楽プロデューサー)
≪チケット料金≫
前売:一般席3,800円 ソファ席4,500円
当日:一般席4,300円 ソファ席5,000円
≪チケット購入≫
チケットよしもと:http://urx.nu/bfkC> 0570-550-100、Yコード【100867】
ローソンチケット:http://urx.nu/bfmi> 0570-084-003、Lコード【39921】
チケットぴあ:http://urx.nu/bfmG> 0570-02-9999、Pコード【439-229】
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