「キラキラママ♪」を諦めた眞鍋かをりの潔く賢い舵取り
昨年10月に第一子を出産し、すでに仕事現場に復帰している眞鍋かをり(35)。芸能界に入る前から憧れを抱き続けてきたTHE YELLOW MONKEYの吉井和哉(49)と4年の交際を経て妊娠・結婚したが、吉井との家庭不和が絶えず噂され、「ママタレ化できなくて大誤算」と揶揄するネットニュースなどもある。今年はイエモンが再結成し、吉井が非常に多忙となったため、子育てを眞鍋ひとりが抱え込みシングルマザー状態を嘆いているとも。
しかし眞鍋が『日経DUAL』で始めたコラム連載からは、いわゆるママタレ市場に打って出ないことが、「大誤算」ではなく「賢い選択」であると伝わってくる。もともと「ブログの女王」と賞賛を浴びた文才を持つ彼女には、改行だらけの文章と絵文字と写真で構成された“ママタレブログ”や、美しく輝く日常生活の一部を切り取って額縁に飾るようなInstagramよりも、長文で思考を綴る形態が合っている。コラムニストとしての仕事は彼女に打ってつけだ。もちろんその内容も、「子供がかわいくてとっても幸せ」なキラキラフィルターのかかったママタレ然としたものではなく、一般女性読者がリアルに感じられるものになっている。
たとえば産後「おっぱい量の足りない自分を責めた」というくだり。『はじめてのことばかりでワケがわからないのに、失敗は許されないという緊張感』『24時間、頭の中はおっぱいのことばかりで、メンタルはボロボロ』。産後2カ月半での比較的早い仕事復帰となったが、5年前に両親が四国の実家から東京都内に移住して近所に住んでいるため、子供を預けて働くことができているという。復帰について『産後すぐに働き始めると「仕事なんかせずにもっと子どものそばにいるべきだ!」なんて言われるのを覚悟していたのですが、そういった声が届かなかったのも、時代なのかもしれません』と、不安だった胸のうちも明かしている。
そんな眞鍋は、あくまでも“ママタレ側”ではなく、“一般読者側”に自分を置こうと試みている。コンビニの雑誌コーナーに陳列される「ママ向けファッション誌」を見て、『洗練されたファッションに身を包み、子どもの手を引いて幸せそうに笑うママさんモデルたち』が放つ。『「子育ても仕事もオシャレも! ママだって女を楽しんでます!」感が充満しているではありませんか』と怖気づく。そして気付くのだ。『子どもを産む前だってろくにネイルもやってなかったし、おしゃれカフェだってめったに行ってなかったじゃん!』。
彼女いわく、『‟ママ”という共通点だけではくくれない』。同じ女性であっても、ズボラで適当メイクで酒好きで髪を伸ばせない眞鍋と、キラキラ小物を好み長い髪を巻いてネイルやオシャレを楽しもうとする女性たちはそもそもジャンルが異なり、「ママだってかわいく!」を標榜するのは後者なのだから、自分は惑わされずに変わらずいれば良いのだと。
よその「ママ」と自分とを比較せず、『意識的に「ママ」というバイアスを外してみる』ことを覚えたという彼女は、見た目うんぬんだけでなく、「ママ」だからといってすべてのママがテキパキ要領よく家事の同時進行ができるわけじゃない、得意と不得意があるのだと説く。他人と比べて自信をなくし落ち込む必要はないことに、早くも思い至った眞鍋はこれから先も、「キラキラを競うママタレ市場」には参入しないだろう。むしろ、文化人枠で活躍する小島慶子の路線で活躍していくのではないだろうか。それがきっと彼女の得意分野でもある。
(清水美早紀)