「与えられた価値に押し潰されそうな女性」を安心させようと、女性が泥をかぶる不条理/『逃げ恥』第9話レビュー
第9話にして16.9%を叩き出し、またしても自己最高平均視聴率を塗り替えた『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)。先週、仲直りしたみくり(新垣結衣)と平匡さん(星野源)は「ハグしたい!」という思いが重なったにも関わらず、会えず仕舞いで幕を閉じました。しかも今週は今週で、平匡さんの仕事が忙しくなっちゃってなかなか会えません。システムのバグによってハグはお預け。ハグバグ剥奪、なんつって。
そんな中。みくりは、ニセ野内こと風見さん(大谷亮平)を狙っている新キャラ・五十嵐安奈(内田理央)と平匡さんがたまたま2人で蕎麦屋に入るところを目撃。風見さんと安奈は合コンで出会ったそうですよ。その2人は一旦置いといて。
その晩、遅くにようやく帰宅した平匡さんに、みくりがその件を詰めたところ、平匡さんは「もしかして嫉妬してくれたんですか?」と確認。みくりに「ばか! 決まってるじゃないですか!」と言われたことで、みくりの好意についに気付いた平匡さん。すると、「ずっと、みくりさんが僕のこと好きなら良いのになって思ってました。考えないようにしてました」「火曜じゃなくてもみくりさんを抱きしめても良いですか?」とハグ。そしてみくりが「何曜日でも何時でも。朝までだって……。すみません、私またっ」と離れようとした時! 平匡さんが、すかさずギュッと抱き寄せ「一緒にいますか、朝まで」と囁き、みくりは頷きながら「……うん」なんて可愛すぎる返事をする。この一連の流れは、鬼リピ決定のほっこりシーンです。その裏では、沼田さん(古田新太)がお得意の盗み聞きで契約結婚だったことを知り、平匡さんは会社のリストラリストに載ってしまったんですけどね。
とはいえ、今回は主役2人よりも百合ちゃん(石田ゆり子)の“綺麗すぎる涙”ですよ。化粧品会社に務める役職付きの百合ちゃんは、とある件で本部長に直談判へ行ったのですが、部長室を出た後に「融通が効かない。(結婚してないから)必死なんだよ」なんて本部長の野次を聞いてしまうのです。その夜、町でばったり出くわした風見さんに漏らした言葉は刺さりました。
「与えられた価値に押しつぶされそうな女性たちが自由になる。自由だからこその美しさ」
「私みたいなアラフィフの独身女だって社会には必要で、誰かには勇気を与えることができる。あの人が頑張ってるなら、自分ももう少しやれるって。今ひとりでいる子や、ひとりでいるのが恐いって若い女の子たちに『ほらあの人がいるじゃない。結構楽しそうよ』って思われたら少しは安心できるでしょ?」
「だから私はかっこ良く生きなきゃって思うのよ」
百合ちゃんが作った化粧品の広告のコピーは「自由に生きる、美しくなる」。これは10年前に百合ちゃんと同期が“モテ”を打ち出していた上司(現本部長)を必死に説得して実現させたテーマなのだとか。今回、直談判に行ったのも、懲りずに本部長が当時のような広告を作成したからなんです。その広告を「かっこ良いですよね」と褒めてくれた風見さんだからこそ漏らした言葉。弱った百合ちゃんを見て「そんなこと言わないでください」と慰める風見さんに、百合ちゃんは自然と涙が溢れてしまったのです。
数日前に2人で飲んでいた時(仲良し!!)には、“子供はほしい?”という話になり、「誰もが深く知るのって無理だと思わない? 誰かが知ってることを誰かが知らなくて」とも言っていた百合ちゃん。ごもっともですよ。だけど「女は母になるのが普通」で、第一線で働いているアラフィフ独身女性にしか知り得ない世界は尊重されづらい……本当に勘弁してほしいですね。何で百合ちゃんが泣かなきゃいけないんですか。何で百合ちゃんが生きづらさを感じなきゃいけないんですか。お陰で、風見さんの評価はうなぎのぼりですよ! なんせ、涙が止まらない百合ちゃんを“顔を背けて壁ドン”し、通行人の好奇の目から守っちゃったんですから。
さらに今回の百合ちゃんは、偶然トゥービーコンティニュード・田島(岡田浩輝)とも再会して、お昼デートの約束も。というのも、以前バーで飲んだ時は離婚協議中だったらしく、今はシングルファーザーになっていたのです。「どっちとくっつくの~!?」なんてそわそわする暇もなく、次回予告では風見さんと進展がありそうですし、トゥービーは良きスパイス止まりでしょう。でも、百合ちゃんと風見さんがすんなりくっつくとも思えず……。ニセ野内、百合ちゃんに契約結婚とか提案しないと良いけど。
(ドラマウォッチ:ナチョス)