「日本の女子学生の13%が援助交際」発言は撤回でも…JKビジネスとアイドル界の“児童売春”的現実

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「YouTube 日本記者クラブチャンネル」より

【本と雑誌のニュースサイトリテラより】


 10月26日、国連「子どもの売春、児童売春、児童ポルノ」特別報告者のマオド・ド・ブーア=ブキッキオ氏が日本記者クラブで会見を開き、「日本の女子学生の13%が援助交際している」(当初は「3割」と報道されたが、これは通訳の聞き間違いということで訂正された)と発言。大きな波紋を呼んでいる。

 これを受け、11月2日・7日には外務省が「客観的な根拠に基づくことなく発言したのは不適切だ」として、窓口である国連人権高等弁務官事務所に抗議。発言の撤回を求め、また、10日には菅官房長官が「わが国としては、到底受け入れられるものではなく、不適切・不適当だと考えています」とも述べた。

 これに対し、マオド・ド・ブーア=ブキッキオ氏は「公開情報から見つけた概算であり、緊急に対応すべきだと強調するため言及した」と返答。公式な調査に基づく数字ではなかったことを明かし、そして昨日11日、菅官房長官が会見で彼女より「13%という数値を裏付ける公的な最近のデータはなく、誤解を招くものだった」との趣旨の書簡が日本政府に届いたことを発表。事実上の発言撤回でこの騒動は幕が引かれることになった。

 確かに、客観的事実なしに「13%」という具体的な数値を出した氏にも問題はあるかもしれない。だが、一方、日本の児童売春、児童ポルノは、国際社会から警告されても当然な状況にあるのは事実だ。

 ブキッキオ氏は記者会見でこう語っていた。

「今回分かったことは、日本においては子どもの性的搾取については実にいろいろな形態をとるということなんです。そして、その行為自体がすべて犯罪化の対象にはなっていないということであります」
「たとえば、例としては援助交際があります。これは女子学生の13%が現在援交をやっていると言われているわけでございますし、最初は非常に罪のないかたちで始まるわけです。JKお散歩といったものに見られるように。しかし、これは事態がどんどん発展してしまうと、深刻かつ危険極まりない行為につながりかねないというものであります」
「また、チャイルドエロティカと呼ばれている、本当に年少の子どもたちを対象にした着エロといったものもありますし、ジュニアアイドルといったものもあるわけで、こういったかたちで広範に搾取につながりかねない行為があるんだということが今回よく分かりました」
「こういったビジネスというのは、非常にお金の儲かるビジネスになっているわけで、一見したところ社会そのものが容認している、かつ、寛容の精神で見ているように見受けられます」
(「YouTube 日本記者クラブチャンネル」配信の記者会見動画より)

ここでまず重要なのは「(性的搾取の)行為自体がすべて犯罪化の対象にはなっていない」という部分である。

 JKビジネスに対する摘発が強まったいまでも、秋葉原では制服やコスプレ姿の少女たちがビラ配りのため街頭に立ち、その客寄せの数は歌舞伎町よりも多いという事態が続いている。氏も指摘している通り、JKリフレやJKお散歩のような、これらJKビジネスの店舗で働いたとしても、未成年の女性たちがいきなり売春行為に関わるわけではない(添い寝やハグなどのグレーな行為は行うにせよ)。店側が正式に出しているオプションはあくまで法律の範囲内にある。「最初は非常に罪のないかたちで始まる」わけだ。ただ問題となるのは、巷間知られている通り、店が正規に用意しているものではない、客と従業員の金銭交渉で決まる「裏オプション(裏オプ)」と呼ばれるもので、これに手を染めることにより、穿いている下着の売買・キスやペッティングやフェラなど性交類似行為、果ては売春行為へと発展していく。

 これら裏オプションは、店がおおっぴらにしているものではないが、客・従業員・店にとって暗黙の了解となっている。いやむしろ、この裏オプの存在こそが店にとって客をおびき寄せる餌となり、とどまるところなく横行していった経緯がある。こうしてJKビジネスは現在のような混沌とした姿になっていった。

 今年7月には、愛知県でJKビジネスを全面規制する条例が施行されるなど、取り締まりも続いているが、女子高生との会話を売りにした「JKコミュ」、少女たちが目の前でおにぎりをつくってくれる「JKおにぎり」、下着が見えるような姿勢で折り紙を折るのをマジックミラー越しで見学する「JK作業所」など、摘発されては新たな業態が生まれるいたちごっこが続いている。ちなみに、このJK作業所でも、ミラー越しにお互いの姿がうっすら見えることから、連絡先の交換が生じ、結局は売春の温床となっていたという。

 また、グレーゾーンの児童ポルノが見過ごされているこの構図は、会見でも指摘されている通り、「アイドル」に関しても同様のことがいえる。2012年にCNNの記者が秋元康にインタビューした番組のなかで「日本社会には現在、若い女の子たちの性的な搾取が多いとの声もあります。あなたが手がけたミュージックビデオにも、制服やビキニ、セクシーな下着に身を包んだ女の子たちが、お互いの顔をなめたり、キスしたり、お風呂に入ったりといった表現があります。ご自身も、この問題に関与していると思いますか?」と質問し話題となったことも記憶に新しい。

 AKB48グループのようなメジャーアイドルではない、着エロ系のジュニアアイドルとなると、事はさらに深刻なものとなる。07年、17歳の女子高校生が出演した作品での過激な演出により、出版社「心交社」のチーフプロデューサーらが児童ポルノ法違反容疑により逮捕。また、09年には過激なイメージビデオで「藤軍団」の異名をとった芸能プロダクション「ピンキーネット」の社長らが児童買春・ポルノ処罰法違反容疑で逮捕されているが、それらは氷山の一角。同程度に過激な他社による未成年着エロコンテンツは野放しにされたままであり、一度摘発が起これば業界は一時萎縮するものの、すぐに過激化が始まるいたちごっこをJKビジネスと同じくこちらも繰り返している。

 また、アイドルビジネスにおいて、さらに性搾取的なものは、なんといっても握手などの「接触商法」であろう。いまやジュニアアイドルたちの「接触」は握手にとどまらない。たとえば、福岡発のアイドルグループ「青SHUN学園」の2ショットチェキ会では、小学生の児童とツイスターゲームをしたり、果ては抱っこしたりと、濃厚な接触が行われ、ネットでその是非について議論が交わされたこともある。

 このような事情を鑑みれば、あまりにも「グレー」な性的搾取の実情を我が国が野放しにし過ぎていることがよく分かるだろう。今回、マオド・ド・ブーア=ブキッキオ氏がこのような記者会見を行うにいたった背景について、モーリー・ロバートソン氏は「週刊プレイボーイ」(集英社)15年11月23日号のなかでこのように綴っている。

〈これに対して「日本のことがわかっていない」と無視したり、「白人の価値観を押しつけるな」と憤っても事態は悪化するばかり。なぜ日本がことさら問題視されるのか、そもそもの事情を知る必要があります。
 近年、世界中で子供の人身売買、児童労働、児童買春が大きな問題となっています。昔から貧しい国では子供の人身売買が行われていましたが、それは基本的には国境の中での出来事でした。ところが、世界中がアメリカとソ連の"陣営"に分かれていた冷戦が終わると、核戦争という大きな危機が去った一方、あちこちで経済混乱や無秩序な紛争が頻発。底なしの貧困が広がるとともに、人身売買のルートも国境を難なく越えるようになります。アフリカ、南アジア、ヨーロッパの旧ユーゴ諸国......といった諸地域で、多くの子供たちが組織的な児童労働や児童買春の被害者となり、虐待、監禁、あるいは殺人という恐怖と隣り合わせで生きているのです。
 それに対して「子供を救え!」と声を上げている側から見れば、日本は先進国にもかかわらず、この問題に関してあまりにも無関心。それどころか、子供を性の対象にしたような"コンテンツ"があふれています。日本人から見れば、なかには完全にアウトなものもあれば、グレーなもの、「まぁOKだろう」というものまでいろいろでしょうが、外からこういったピースをひとつずつ合わせていくと、日本全体が児童買春天国に見えてしまうというわけです〉

 恣意的な運用に対する危惧が叫ばれつつも、本年7月からは児童ポルノの単純所持が禁止された。このような動きは、諸外国に足並みを揃えるという意味合いもあるものと思われるが、そのような法律をつくったとしても、マオド・ド・ブーア=ブキッキオ氏が会見で示唆したような、「こういったビジネスというのは、非常にお金の儲かるビジネスになっているわけで、一見したところ社会そのものが容認している、かつ、寛容の精神で見ているように見受けられます」という状況を変えない限り、今後もこのような騒動は起こり続けるだろう。

 JKビジネスにせよ、アイドル産業にせよ、性的な児童虐待につながりかねない「グレーゾーン」を「コンテンツ化」する我々の心性を見直すべき時がきている。「女子学生の13%が援交」発言は撤回されたとしても、我が国が、児童ポルノグレーゾーン大国なのは間違いのない事実なのだから。
(田中 教)

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