Acid Black Cherryは現代ロックのドンキホーテか? 作品に込められた“挑戦”を分析
【リアルサウンドより】
10月22日にリリースされたAcid Black Cherryのニューシングル『INCUBUS』は、初週に自己最高初動売り上げとなる約65.000枚を売り上げて2位にランクイン。実はこの記録には「CDシングル週間ランキング1位未獲得アーティストによる最多2位獲得」という珍記録までオマケでついてきたという。昨今、チャート上位の常連アーティストでも熱心なファン以外の音楽リスナーからはあまりその実態がよく知られてない、というのはよくあることではあるが、それにしても現在のAcid Black Cherryを取り巻く状況は異例のものだと言えるだろう。
Janne Da ArcのyasuがAcid Black Cherryの活動をスタートさせてから今年で8年目、Janne Da Arcでの活動も含めると実に18年という長いキャリアを持つ音楽家が、現在その人気の新たなピークを迎えているわけである。通常、ここまで長期にわたってポピュラリティを維持/拡大しているバンド/ミュージシャンにはどこかで一般層にバッと広がるブレイクポイントが訪れるものである。しかし、Acid Black Cherryの活動は一部のファンにとって密かな楽しみとして愛でられたまま、その感染範囲をジワジワと拡大させている状況なのだ。ちなみに、今回の『INCUBUS』のリリースタイミングのプロモーションも、テレビ/ラジオ出演など一般的な意味でのプロモーションは一切なし。基本的には公式HPとブログでの発信のみというから驚かされる。
これまで機会がある度に耳にしてきたAcid Black Cherryの音楽から自分が受けてきた印象は、いわゆるビジュアル系の枠組みに収まるものではなく、誤解を恐れずに言えば「歌謡曲」的なものだった。70~80年代の歌謡曲界で異物であり続けてきた沢田研二、バラード曲においてはその甘い声から郷ひろみ。もちろんAcid Black Cherry=yasuの音楽的ルーツの中核にはBOØWYやL’Arc-en-Cielが存在しているわけだが(今回の『INCUBUS』のカップリングでもBOØWY「CLOUDY HEART」のカバーという大ネタをかましている)、もっと広い大衆層にもアピールし得る日本的な歌モノの担い手という認識。Acid Black Cherryのコンセプトとしてよく語られる「エロ」というのも、実はそんな歌謡曲本来が持っていた側面の一つである艶歌(現代もそこに自覚的な表現者の筆頭といえばサザンオールスターズの桑田佳祐だ)の現代的な解釈なのではないかと。しかし、その認識は部分的には正しいかもしれないが、アルバム作品も含めてこれまでの作品をまとめてじっくり聴いてみて、Acid Black Cherryの表現の核はどうやら別のところにあるのではないかと思い至った。
アメリカの犯罪小説の大家ジェイムズ・エルロイの代表作(後にブライアン・デ・パルマも映画化)のモチーフとしてもよく知られる、1940年代のロサンゼルスで起こった実在の未解決猟奇殺人事件「ブラック・ダリア事件」から着想を得たという2009年のアルバム『Q.E.D.』。マヤ暦の予言と世界終末時計と2012年の現在という3つのキーワードを結びつけて、「生きる」ことへの祈りに昇華させた2012年のアルバム「『2012』」。Acid Black Cherryがその活動の本筋であるアルバム作品でやってきたことは、実は70年代の古典ロック的な壮大なロックオペラに近い。すっかりシングル単位、いや、楽曲単位でしか音楽が消費されなくなったこの時代にあって、Acid Black Cherryのそんなドン・キホーテのような挑戦は着実に支持を広げてきた。
来年2015年2月4日には3年振りとなるアルバム『L-エル-』がリリースされることが既に発表されているAcid Black Cherry。「INCUBUS」(睡眠中の女性を犯す悪魔のこと)はその予告編的な位置づけの楽曲とのことで、その歌詞やミュージックビデオには来るべきアルバムへの多くのヒントが隠されているという。そもそもロックオペラという表現形態のルーツにあるのはTHE WHOの1969年のアルバム『TOMMY』という作品で、それは「ロックには人の意識を変革する力がある」という信念から生み出されたものだった。「Acid Black Cherryはその後継者である」なんてところまで大風呂敷を広げるつもりはないが、この2010年代にあっても、そんな大仰な夢を描いて作品に取り組んでいるミュージシャンがいるということは、もっと広く知られてもいいと思うのだ。
(文=宇野維正)
Acid Black Cherry『L-エル-(Project『Shangri-la』LIVE 盤)』(motorod)
■リリース情報
『L-エル-』
発売:2015 年2 月4 日
【CD+DVD①】〈Project『Shangri-la』LIVE 盤〉
品番:AVCD-32241/B 価格:¥4,800(税抜)
◇「L-エル-」コンセプトストーリーブック付き(100 ページ予定)
※初回限定仕様:デジパック仕様
ヒットシングル4 枚を含む全13 曲収録予定
・「Greed Greed Greed」
・「黒猫 ~Adult Black Cat~」
・「君がいない、あの日から…」
・「INCUBUS」
◆Acid Black Cherry “Project『Shangri-la』” LIVE
Project『Shangri-la』Encore Season アリーナツアーより
日本武道館LIVE 映像 全17 曲を全曲完全収録
〈2014 年5 月29 日 日本武道館にて開催〉
01_Greed Greed Greed
02_Murder Lisence
03_楽園
04_蝶
05_1954 LOVE/HATE
06_黒猫 ~Adult Black Cat~
07_君がいない、あの日から…
08_Maria
09_so…Good night.
10_ピストル
11_罪と罰 ~神様のアリバイ~
12_Black Cherry
13_シャングリラ
【Encore】
E1_doomsday clock
E2_scar
E3_SPELL MAGIC
E4_20+∞Century Boys
【CD+DVD②】〈Project『Shangri-la』ドキュメント盤〉
品番:AVCD-32242/B 価格:¥4,500(税抜)
◇「L-エル-」コンセプトストーリーブック付き(100 ページ予定)
※初回限定仕様:デジパック仕様
AVCD-32241/B のCD 収録曲と同様
◆Project『Shangri-la』完全密着ドキュメントムービー
2013 年8 月から2014 年6 月まで約10 ヶ月に渡り開催され、18 万人を動員したProject
『Shangri-la』全都道府県ツアーの完全密着ドキュメント映像を収録
約60 分に渡るドキュメント映像では、yasu のライブや作品に対するこだわりからの緊張感あ
るバックステージ、また各地でオフショットなど、ABC にとって最長ツアーとなった今プロジ
ェクトの貴重映像を、yasu インタビューを交え収録
◆シングル楽曲4 曲のMUSIC CLIP 収録
1.Greed Greed Greed【MUSIC CLIP】
2.黒猫 ~Adult Black Cat~【MUSIC CLIP】
3.君がいない、あの日から…【MUSIC CLIP】
4. INCUBUS【MUSIC CLIP】
◆Project『Shangri-la』MC ベストセレクション
1st Season 2013/8/13 福島公演から、Final Season 2014/6/22 宮城公演ま
での全61 公演分のライブMC から選りすぐりのMC を収録(全公演分収録予定)
約120 分収録予定
【CD ONLY】
品番:AVCD-32243 価格:¥3,000(税抜)
【初回特典】 ※CD ONLY(AVCD-32243)初回盤のみ
Acid Balck Cherry 44 ページフォトブックレット付き
yasu の最新撮りおろしビジュアル画像満載、Acid Black Cherry44 ページフォトブックレット付き!
初回限定:スリーブ仕様
※「L-エル-」コンセプトストーリーブックは封入されていません。
AVCD-32241/B のCD 収録曲と同様
Acid Black Cherry『INCUBUS(初回生産限定盤)』(motorod)
『INCUBUS』
発売:2014年10月22日
【CD+DVD】〈初回生産限定盤〉品番:AVCD-32238/B ¥1,600(税抜)
1. INCUBUS
2. CLOUDY HEART (“LAST GIGS” ver.)【Recreation Track】
1. INCUBUS 【MUSIC CLIP】
2. OFF SHOT
【CD ONLY】〈通常盤〉品番:AVCD-32239 ¥1,000(税抜)
【初回特典 ※AVCD-32239限定】
・ミニフォトブック 封入
Special Price盤 (1曲入り)【CD ONLY】〈初回生産限定盤〉
品番:AVCD-32240 369(税抜)
1. INCUBUS
【封入特典】
ABCオリジナルトレカ1枚封入(全4種)
■オフィシャルサイト
http://www.acidblackcherry.com/