SPECIAL OTHERS ACOUSTICがライブで見せた、実験的でオーガニックな世界
【リアルサウンドより】
2014年10月に1stフルアルバム『LIGHT』でデビューしたSPECIAL OTHERS ACOUSTICが、アコースティック8都市ツアー2014-2015の東京公演を2015年1月31日、東京キネマ倶楽部にて開催した。SPECIAL OTHERS ACOUSTIC(通称:S.O.A)はその名の通り、インストバンドSPECIAL OTHERS(以下、スペアザ)のアコースティックプロジェクト。これまでに5枚のフルアルバムをリリースし、2013年には初の武道館公演をソールドアウトのうちに成功させたスペアザだが、S.O.Aは全くの新人バンドとしてのスタート。この日の公演もチケットはもちろんソールドアウトし、スペアザとはまた違ったアコースティカルで心地よいバンドサウンドにオーディエンスは酔いしれた。
ステージ上にはメンバーが“第5のメンバー”と呼ぶ大きなサボテンやランプ、植物やウッドのポールハンガーなどが並び、なんだかとてもアットホームな雰囲気。ふらっとメンバーの4人が現れ、穏やかなアコギの音色で始まった1曲目は「Marvin」。続く「Mambo No.5」ではアップテンポなセッションで、観客は気持ち良さそうに体を揺らしていく。S.O.Aは宮原良太がパーカッション・ギター、又吉優也がマンドリン・ギター、柳下武史がギター・ベース、芹沢優馬がグロッケン・メロディオン(鍵盤ハーモニカ)という編成だが、ステージに登場する楽器はさらに多岐に渡る。「LINE」では芹沢がサーフドラム(波のような音を出せる楽器)を鳴らして感傷的なメロディーを引き立てたり、「BEN」では又吉がトライアングルを鳴らしたりと、実験的にさまざまな音を絡ませていくのが面白い。スペアザのライブでは時に激しく、熱のこもったセッションで観客のボルテージを上げていく彼らだが、S.O.Aのサウンドはただ音楽に体を任せれば幸福感で溢れてしまうような、どこまでもオーガニックな世界。「LIGHT」では最初しばらくジャムセッションが続き、曲に入ってステージが明るく照らし出され自然に4人の演奏が熱を帯びていく。観客たちもS.O.Aが作り出すナチュラルな空気に呼応して、会場からは一曲一曲に対し温かい拍手が贈られた。
その後本編唯一のMCでは“SPECIAL OTHERS ACOUSTICを何と略すか問題”について4人のゆるーいトークが続く。宮原は「“S.O.A”(という略称)を広めたいからしつこく言い続けていく」ということだが、場内からは「スペアコ~」という声もあがり、メンバーも「スペアコでいいんじゃね?」という空気に。今回のアコースティックバンドとしての活動についても「一発だけの企画じゃない」「継続的に出していく」といい、「スペアザと平行して活動していこうと思っています、よろしくお願いします」と宮原が力強く宣言すると、場内からは大きな歓声が上がった。そして「Wait for the sun」で、温かい空気に包まれたまま本編は終了。アンコールでは「ツアーがもうすぐ終わってしまうのが寂しい、一年間くらい廻りたい(宮原)」「全県ツアーとかやりたいね(柳下)」とバンドの意欲的なテンションを覗かせ、シンガーソングライターのLeyonaに楽曲提供した「ROSEN」をセルフカバーして披露。大団円でこの日のステージは幕を閉じた。
ステージ上で記念写真を撮り「楽しかったです、ありがとうございました」と語りかけるメンバーの姿が印象的だった。スペアザとS.O.Aという2つのスタイルを行き来しながら、音楽を楽しみ尽くす勢いの4人。今年も音楽ファンを大いに楽しませてくれるに違いない。
(撮影=KAZUHARU IGARASHI/取材・文=岡野里衣子)