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光宗薫、ベッドシーンで見せた微笑みの破壊力 姫乃たまが『ピース オブ ケイク』の濡れ場を考える

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8月25日に開催された『ピース オブ ケイク』記者会見にて、ベッドシーンについて語る光宗薫

【リアルサウンドより】

 いつかテレビで見た、アイドル然としていない女の子の姿を思い出していました。

「元AKB48の光宗薫が映画で濡れ場に挑戦していますが、同じアイドルとしてどう思いますか」と、聞かれたからです。男性への媚びを感じさせまいとする態度が、禁欲的で逆に魅力的だった彼女。中性的な印象から、濡れ場がイメージできません。

 しかも「同じアイドル」と言っても、こちとら人前で歌うのが本業なのに、ライターを兼業してなんとか活動している程度の地下アイドルです。彼女と自分を同列に考えられるわけもなし、どういう気持ちだったのかなあ、撮影どうだったのかなあ、程度の、凡庸な好奇心しか湧きません。

 当連載はそんな地下アイドルが、映画の“濡れ場”についての感想を綴っていくものです。

 ジョージ朝倉原作の「ピース オブ ケイク」は、多部未華子が演じる25歳の主人公、梅宮志乃と彼女をとりまく同世代の男女の「等身大の恋愛感覚」(と、パンフレットに書いてあるのですが、流されるがまま異性と関係を持ってしまったり、恋人のいる異性にダメ元で告白したり、恋人のケータイから勝手にリダイヤルして怒ったり等々……のことのようです)が描かれた作品です。下北沢のほか、阿佐ヶ谷、高円寺などの中央線沿線を舞台に撮影されています。

 光宗薫の濡れ場は、恋人役である綾野剛との絡み、それから少しだけお隣さんである主人公の家に漏れる喘ぎ声の演技があります。後者は誰とも絡まない状態で、正座して音声だけ収録したことが取材で明かされており、現場を思うとシュールな恥ずかしさがあります。

 絡みのシーンはほとんど布団に覆われているため露出は多くないのですが、時折、画面に現われるすらりとスレンダーな手脚や、低めの喘ぎ声は中性的で、特別に性的な欲求が掻き立てられることもなく、彼女の毅然としたイメージは保たれたままでした。唯一、ギャップがあったのは「どうやってやったら気持ちいい?」と聞いたあと、掛け布団の中に潜り、綾野剛の股間に顔を寄せてから、さっと顔を出して「いってもいいのに」と、いたずらに微笑んだ瞬間でした。あの可愛さはなんというか、見てはいけないものを見たようなドキドキがあったのです。

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同作では、多部未華子と綾野剛もラブシーンを演じている

 AKB48から離れて3年ほどたった今もなお、元アイドルと称されがちな彼女ですが、ベッドシーンはアイドルから脱皮する過程に感じられました。あのいたずらな笑顔は、テレビで見かける彼女の毅然とした態度、雑誌で見かける中性的な印象の写真とは違って、プライベートだとこんな風なのかな、と思ってしまう生々しい愛らしさがあります。

 ちなみに元アイドルということで彼女の濡れ場ばかり話題になっていますが、今作では主演の多部未華子さんの方が肌の露出も濡れ場も多いです。しかし、最近はアダルトビデオの女優さんも細いなあと思っていたのですが、映画女優さんって本当に細いですね……。

■姫乃たま(ひめの たま)
地下アイドル/ライター。1993年2月12日、下北沢生まれ、エロ本育ち。アイドルファンよりも、生きるのが苦手な人へ向けて活動している、地下アイドル界の隙間産業。16才よりフリーランスで開始した地下アイドルを経て、ライター業を開始。アイドルとアダルトを中心に、幅広い分野を手掛ける。以降、地下アイドルとしてのライブ活動を中心に、文章を書きながら、モデル、DJ、司会などを30点くらいでこなす。ゆるく、ながく、推されることを望んでいる。

[HP] http://himeeeno.wix.com/tama
[ブログ]姫乃たまのあしたまにゃーな http://ameblo.jp/love-himeno/
Twitter https://twitter.com/Himeeeno

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AKB48『マジすか学園5』にやべきょうすけが出演する意味とは? 「ごっこ」から「マジ」への転換

 8月末よりAKBグループの宮脇咲良などが出演する『マジすか学園5』が、1・2話のみ地上波放送、それ以降は動画配信サービス「Hulu」にて配信という異例の形で放映が始まった。その第一話の衝撃的な展開に、度肝を抜かれたファンも多かったのではないか。『マジすか学園』はシーズン5まで続く人気シリーズだが、ここにきてある変化が起きつつある。

参考:日本で一番ロッカールームが似合う女優!? 大島優子が語る、卒業後初主演映画『ロマンス』の手応え

 いきなりヤクザの若頭が、少女の前で、自身の舎弟をリンチするシーンで『マジすか学園5』の第一話は幕を開ける。こう書くと民放のドラマでもよくあるシーンだと思うだろう。しかし、若頭を演じる俳優・やべきょうすけは、そのドス黒く輝く綺羅星のごときキャリアで培ったドちんぴら演技で、地上波の限界を超えた「本物」にしか見えない迫力を見せつける。飛び交うやべの怒声。沸騰した熱湯をかけられ絶叫する舎弟。悶絶する舎弟たちに執拗にヤクザキックを連打した後、やべは縛られて吊るされている少女にこう凄む。

「ヤンキーごっこはしまいや!」

 この一言に、制作サイドが本作で何をやろうとしているか、そのメッセージが込められていると私は感じた。これは鬼ごっこに本物の鬼が出ることを意味しているのだ。

 
『マジすか学園』は、AKBグループのアイドルたちが演じるヤンキー女子高生たちが、俗にいう不良の“テッペン”を巡り戦う姿を描いた青春ドラマシリーズである。題材こそヤンキーと物騒ではあるが、暴力の陰惨さを描くようなアプローチではなく、「戦いを通じて絆を深める」という少年ジャンプ的ノリの爽やかな世界観であり、キャラクターも男装やロリータ、歌舞伎メイクなど、かなりマンガ寄りに造形されていた。本編の前に「これは学芸会の延長です」「登場人物の一部にお見苦しい演技がございます」的なテロップを出すなど、イイ意味での「ゆるさ」があるドラマだ。シーズン3で刑務所モノになるなどの設定変更はあれど、そういうゆるい部分は一貫していた。
そんな「マジすか」に、シーズン5にして起きた異変。それは先のやべの台詞で端的に表現されている。「ヤンキーごっこ」を放棄して、「マジになった」ことである。


 実はこの変化はキャスティングの時点から始まっていた。これまで主要キャストは当然ながらAKBグループのメンバーで固められていた。しかし、今回は重要な役どころに外部の俳優陣が大量投入されている。その面子が凄い。麻雀Vシネ 『むこうぶち』シリーズでクールな魅力を発揮する袴田吉彦、個性派・岡田義徳、実録犯罪映画の傑作『凶悪』にて、爆笑しながら老人にウォッカを一気飲みさせて急性アルコール中毒で殺害するなど、文字通り凶悪な演技を披露したリリー・フランキー。「その筋」で一枚看板を張れる役者たちである。そして、最も特筆すべきは、日本ヤンキー映画の生き字引・ やべきょうすけの参戦だ。この点に、制作サイドの「ヤンキーごっこ」をやめてやる!という決意を感じる。
やべきょうすけは、映画・Vシネマなどでアウトローを演じ続けている俳優である。そのキャリアはまさしく日本ヤンキー映画の歴史そのもの。『キッズ・リターン』『クローズZERO』『闇金ウシジマくん』…など、90年代から現在に至るまで、ヤンキー系の映画の重要作・人気シリーズのほとんどに出演している名バイプレイヤーである。決して美男子というわけではないが、チンピラを演じたときの圧倒的なリアリティと、それと同時に、どこかに漂うコミカルさが彼の持ち味である。さらに、やべのキャリアと、日本ヤンキー映画史を語る上で、絶対に欠かせない点がある。やべは映画 『クローズZERO』シリーズを大ヒットへと導いた立役者でもあるのだ。

 やべは、『クローズ』の作者である高橋ヒロシと個人的に親交があり、彼の映画への参戦は、長年に渡って実写化を断り続けていた高橋ヒロシに、『クローズ』実写化を了承させる決定打となった。さらに自身も主人公を導くチンピラ役を好演。『クローズZERO』は大ヒットとなり、やべの熱演も高い評価を受けた。

 同作の大ヒットは、日本の映画・ドラマ界にヤンキーものブームを巻き起こすことになる。そして、そんなヤンキーブームの中で生まれたのが、『マジすか学園』だったのだ。やべがいたから『クローズZERO』は生まれ、『クローズZERO』の大ヒットによって『マジすか学園』は誕生。つまり、やべがいなければ『マジすか学園』も存在しなかったのだ。

そんなやべが『マジすか学園』に出る。繰り返すが、これは鬼ごっこに本物の鬼が出るようなものである。もちろん、『マジすか学園』に非AKBグループの役者を重要な役どころでキャスティングするということ自体が、非常に危険な賭けである。もう「学芸会の延長」では許されない。この方針の転換に伴うリスクは、制作サイドも重々承知だろうが、やべまでもキャスティングしたことに、並々ならぬ気合いが感じられる。

 その気合の表れが、冒頭で触れたキレまくるやべで幕を開ける第一話だといえるだろう。このシーンに示された通り、『マジすか5』はそれまでの 「ヤンキーごっこ」とは一線を画す、陰惨なヴァイオレンス描写とシリアスなストーリーが展開する。そのため、ここまで築いてきた世界観と、新たな要素が衝突を始めている感も否めない。しかし、それはすべて「マジ」になった代償であり、代償を支払っただけの、ドラマとしての加速があるのも事実だ。

 「ヤンキーごっこ」をやめて、マジになった『マジすか学園』。このドラマは、どういう形で決着を迎えるのか。成功か、あるいは…それはまだわからない。しかし、破壊なくして創造なし。危険な挑戦をおかしてでも、ドラマを飛翔させようとする制作陣の姿勢にはエールを送りたい。(加藤ヨシキ)

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